理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-223
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生活環境支援系理学療法
在宅高齢者におけるCS-30と身体機能及び精神機能との関連性
佐藤 千春高橋 茂樹竹内 智也斉藤 亨畠山 功伊藤 俊一
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キーワード: CS-30, 在宅高齢者, 精神機能
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抄録

【目的】30秒椅子立ち上がりテスト(以下,CS-30テスト)はJonesらにより下肢筋力を評価する方法として作成され,中谷らにより日本人用に修正され加齢による筋力変化を簡便に評価出来ると報告されている.またCS-30テストは下肢筋力及び歩行速度やバランス能力,転倒との関連について研究が行われ,転倒予防の重要な評価法のひとつとして広く利用されつつある.しかし,実際にCS-30を高齢者に実施する中で筋力などの身体機能は高いにも関わらず,CS-30のようなパフォーマンステストに反映されない症例が点在した.文献的知見から高齢者では身体機能のみならず精神機能も低下すると言われており,CS-30テストなどのパフォーマンステストを低下させる要因として考えられるのではないかと考えた.しかし,高齢者におけるパフォーマンステストと精神機能との関係性を報告したものは少ない.そこで今回我々は,在宅高齢者におけるCS-30テストと身体機能・精神機能との関連性を検討することを目的とした.

【方法】対象は新聞広告や公民館の回覧板にて公募した当院で開催している転倒予防教室に参加した在宅高齢者44名(男性13名,女性31名,平均年齢77歳)とした.教室の開催に際し,本研究の主旨を説明し書面にて承諾を得た.評価内容は,身体機能として膝関節伸展筋力(以下筋力),指床間距離(以下FFD),片脚立位時間(以下OFS),CS-30テストを計測し,精神機能として健康関連QOLを,SF-36を用いて評価した.膝伸展筋力は、端座位膝関節90°屈曲位における等尺性膝伸展運動を麻痺側・非麻痺側ともに2回実施し、アニマ社製μ-TASを用いて測定した.筋力値は2回の最大値を体重で除した値を検討に使用した.CS-30は、原法に基づき、肘掛のない40cm高の椅子を使用して、開始肢位を両膝関節屈曲100°の座位とし、30秒間における立ち上がり回数を測定した.SF-36は8つの下位項目の総合得点を算出し研究に用いた.解析は,CS-30テストを目的変数とし,他の諸因子を説明変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)を行った.また,統計ソフトはstat view5.0を使用し,有意水準は5%未満とした.

【結果と考察】重回帰分析の結果,身体機能として筋力・FFD,精神機能としてSF-36総合計得点が説明変数として採択された.過去の研究から,CS-30テストは筋力などの身体機能の評価法として有効であると報告されている.また,高齢者において,身体機能のみならず精神機能も低下するという報告もある事から,本研究の結果から在宅高齢者においてCS-30テストは身体機能のみならず,精神機能の影響も受けていることが示唆された.

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© 2009 日本理学療法士協会
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