理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-584
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物理療法
高齢者に対するハイブリッド訓練法の効果
高野 吉朗羽田 圭宏前田 貴司久保 高明志波 直人田川 善彦
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抄録

【目的】
我々は電気刺激による筋力増強法ハイブリッド訓練法(以下,本法)を考案した.本法は拮抗筋を電気刺激し,その筋収縮を主動筋の抵抗とする方法である.主動筋は求心性運動を行い,電気刺激を受けている拮抗筋も求心性収縮を行うが,主動筋の運動により引き伸ばされ遠心性収縮となり効率的に行なえる.過去に筋力増強運動に使用し筋肥大や筋力の改善を検証してきたが, 対象者の多くは若年者であった.本法が臨床で用いられる為には,幅広い年齢層での知見が必要である.本研究の目的は本法が高齢者への適応の可能性を検討する事である.
【対象・方法】
本研究開始前に久留米大学医学部倫理委員会の承認を得た.対象は地域在住高齢者20名,平均年齢67.8±4.78歳で,本法を使用するハイブリッド群と対照群としてマシントレーニング群の2群に無作為に分類した.ハイブリッド群には電気刺激に関する危険性等を説明し同意を得た.方法は本法を用いて両大腿前後面に電極を貼付し膝屈伸運動を行った.電気刺激条件は電気刺激時間各筋3秒,休止時間60秒,1セット10回,10セット,計19分,20~30%MVCの負荷で行った.マシントレーニング群は膝屈伸筋力マシン (OG社製)を用いて,40~60%MVCの負荷で1セット8回10セット計19分で行なった.期間は週2回12週間行った.運動介入前後で等速性筋力測定機器Biodex3-PRO(Biodex社製)を用いて,膝屈曲60度位にて等尺性収縮にて膝屈伸トルクを測定した.運動介入前後の変化を対応のあるt-検定と2群間の比較を統計解析し5%未満を有意な変化とした.
【結果】
膝伸展筋力はハイブリッド群で運動介入前78.1±22.54Nmから介入後113.48±27.1Nmと45%増加(P<0.001),マシントレーニング群で95.3±41.62Nmから137±53.28Nmと44%増加(P<0.01)であった.膝屈曲筋力はハイブリッド群で運動介入前37.34.1±11.62Nmから介入後43.61±15.03Nmと17%増加(P<0.05),マシントレーニング群で44.31.±19.21Nmから48.27±19.96Nmと9%増加(P=0.167で有意差なし)であった.両群間に有意差は認められなかった.
【考察】
本法を高齢者に用いて膝筋力の改善が認められた.対照群と比較して屈曲筋力では増強効果が大きかった.本法は椅子座位の開放性運動連鎖であっても閉鎖性運動連鎖と同等以上の効果が得られ,近年高齢者に用いられるマシントレーニングより,携帯可能な為ベッドサイドや在宅などで使用可能で有用である.また,高齢者の筋力低下にみられるTypeII筋線維の萎縮に対して電気刺激療法は有効とされ,本研究結果は重要な所見であると推察される.MRI画像の解析などを用い,今後の臨床使用の可能性を検討したい.

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© 2009 日本理学療法士協会
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