理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O1-224
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一般演題(口述)
リハビリテーションスタッフは症状の変化にあわせた急変時対応が行えるか
急変時対応シュミレーションから見えてきた課題
田代 尚範鵜沢 吉宏島袋 壮仁村永 信吾森 憲司
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抄録
【目的】
安全管理の観点から急変対応に関する講習会は増えてきており、その関心は高くなっている。しかし講習内容は静的なマネキンに対する手技の習得や機器の使用方法が中心であり、状態の変化にあわせた判断や行動選択を経験する機会は少ない。急変時対応は、急変への気づきや状態の評価、適切な処置、他のスタッフへの協力要請や医師への報告など患者の状態にあわせ迅速に対応を判断する能力が求められる。本研究の目的は、急変時対応シュミレーションにおいて、対応を求められるスタッフがどの程度状態の変化にあわせ評価や行動、報告ができるかを調査することである。
【方法】
当院リハビリテーション事業部に所属する経験年数5年以上のスタッフ11名を対象とした。場所は当院シュミレーションセンターにて行い、米国METI社製ECS(Emergency Care Simulator)を用いて、急性心筋梗塞発症の急変時対応シナリオを作成し、その行動をビデオで撮影した。評価項目は気づき・評価、行動、報告の3項目を主項目とし、「行うべき行動が適切なタイミングで正確に行える」を1点、「的確に行えていない」を0点、合計41点満点で採点した。評価者はリハビリテーション専門医1名、当院BLSインストラクター3名の計4名でビデオを見ながら採点し、4名の平均点を代表値とした。
【説明と同意】
本研究を実施する際に当院倫理委員会の承認を得た。また、対象者には研究の趣旨や内容を説明し、同意を得た。
【結果】
対象者の内訳は、男性8名、女性3名、平均経験年数9.0±5.62年、所属部署は総合病院4名、クリニック2名、リハビリテーション病院4名、健康増進センター1名で、対象者全員がBasic life support(以下BLS)受講者であった。合計平均は24.5/41点(15点-36点)、評価項目別では、気づき・評価は平均16.4/23点、(9.5-22.3点)、行動は平均4.5/7点、(3.3-6.5点)、報告は平均3.7/9点、(0.5-7.3点)であった。
【考察】
対象者はBLS講習会を受講していたが、合計平均は約6割であり、特に報告内容が4割程度と低い正答率であった。動的なマネキンを使用することで、症状の変化を評価、判断する能力を調査したが、静的なマネキンでの教育のみではその能力の習得は不十分であり、安全管理の視点から急変時対応の教育には手技や機器の使用方法のみならず、症状変化の評価や医師への報告内容の統一化などを含めた教育内容が必要と思われた。
【理学療法学研究としての意義】
職場の安全管理を統制する上で、急変時対応には、変化する症状にあわせた評価や緊急性の判断、報告内容の統一化を図る教育プログラムの必要性が示唆された。
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© 2010 日本理学療法士協会
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