理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PI1-013
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ポスター発表(一般)
超音波診断装置による大腰筋活動の評価
大腰筋の抗重力作用について
山口 徹竹井 仁
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抄録

【目的】
姿勢保持において大腰筋は重要な役割を果たしている。しかしながら大腰筋の活動を評価した報告には、MRIやワイヤー筋電を用いたものがわずかに散見される程度である。
超音波診断装置を用いて測定する利点にMRIのような高価な機器を使用せず、ワイヤー筋電図を使用する際の侵襲などの危険もなく大腰筋の筋活動を評価できる可能性がある。
端座位を保持するだけでも姿勢保持筋としての大腰筋の活動が認められることや、姿勢保持を行うための筋の持続収縮に効率的な赤筋で大腰筋が構成されていることなどが、先行研究でも報告されている。第45回大会で超音波診断装置を用いた大腰筋の画像測定の信頼性と妥当性を報告した。今回は端座位において上方へ牽引し、体幹部の部分的に免荷することで、姿勢保持筋としての大腰筋の働きを超音波診断装置を用いて検討したので報告する。

【方法】
対象は健常成人男性8名。年齢・身長・体重の平均値と標準偏差は、それぞれ30.1±5.1歳、173.0±4.2cm、66.4±4.2kgであった。測定機器は超音波診断装置(東芝メディカルシステムズNemioXG)を用いた。
測定肢位は被験者の足がつく端座位で、股関節・膝関節屈曲90度、耳垂・肩峰・大転子が一直線となるような肢位を全荷重位とし、懸垂器具(可動式免荷装置アンウェイシステム)を用いて、体幹部の重さを軽減しかつ肢位が変わらない最大免荷時の肢位を最小荷重位、全荷重位の半分の重さにした肢位を50%荷重位の計3肢位の測定を行った。また同時に第1胸椎棘突起から第5胸椎棘突起までの距離も測定した。検者は被験者の背側より第1腰椎から第5腰椎まで各腰椎部を各測定肢位で、超音波診断装置を用いて大腰筋の超音波静止画像を記録した。超音波静止画像上の大腰筋の特定は大腰筋の筋膜の境界線を基準にし、Image Jを用いて各腰椎レベルにおける大腰筋断面積を測定して[mm2]単位で測定した。
統計処理には、統計処理ソフトSPSS ver.17.0を用いた。実験については対応のある一元配置分散分析と多重比較検定(Turkey HSD法)で分析し、有意水準は5%とした。

【説明と同意】
本研究の目的・方法・趣旨等を口頭・紙面で十分説明し、同意を得られた対象者のみ実験を実施した。

【結果】
第3、4、5腰椎部における全荷重位の大腰筋断面積が最小荷重位に比較して有意に大きかった。
第1から5胸椎棘突起間距離は全荷重位と50%荷重位では差がなく、全荷重位と最小荷重位間で0.5~2cmとなった。

【考察】
第3、4、5腰椎部の大腰筋断面積が最小荷重位に比べ全荷重位で広がったことが分かった。この結果は先行研究からの姿勢保持に大腰筋が関与している報告と一致した。しかし第1から5胸椎棘突起間が全荷重位にくらべ最小荷重位で長くなった分、大腰筋が伸長されて断面積が小さくなった可能性も考えられた。
第1、2腰椎部については有意な差が認められなかったが、第45回大会の報告における上位腰椎では大腰筋の筋形態に有意な変化が見られなかった点と一致した。原因として大腰筋の起始部に近く断面における腱の割合が多いために筋断面積の変化が少なかったと考える。
今後、体幹部の大腰筋以外の筋の活動の有無で大腰筋の筋形態にどのような影響を与えているかを検討したい。

【理学療法学研究としての意義】
超音波診断装置を用いて大腰筋の活動を評価することで、動的な筋活動の変化を確認することが可能となる。また経時的な変化を連続的に評価することも可能となると考える。姿勢変化に大腰筋が及ぼす影響の検討や効果的な大腰筋強化法の確立につながると考える。
また臨床の場面において簡便に筋活動の評価を行うことが可能となると考える。

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© 2011 日本理学療法士協会
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