理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PI1-180
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ポスター発表(一般)
インソールが脳卒中片麻痺患者の歩行に及ぼす影響について
小野田 哲也松元 秀次上間 智博廣川 琢也金子 政人新田 博文牧田 光広川平 和美
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抄録

【目的】
インソールは足アーチの支持や足部アライメントを修正することにより足部機能を補助し、姿勢や運動時の身体コントロール調整を行うことを目的として作製する。インソールの歩行に関する研究は多数あるが、整形外科疾患に対するものが多く、中枢疾患に対する報告は少ない。そこで、今回インソールが脳卒中片麻痺患者の歩行に及ぼす影響についての比較、検討を行ったので報告する。

【方法】
対象は短下肢装具や杖を使用し歩行が監視レベル以上の脳卒中片麻痺患者9名(男性6名、女性3名)である。平均年齢は59.6±15.1歳で脳出血6名、脳梗塞3名、右片麻痺6名、左片麻痺3名。平均罹病期間は40.8±30.9週で、下肢Brunnstrom stageはIII 2名、IV 6名、V 1名。除外基準は著しい整形外科疾患や高次脳機能障害を有するものとした。方法はインソール両側あり、インソール両側なし、インソール非麻痺側のみ、インソール麻痺側のみの4条件に分け、10m歩行速度と歩数、床反力計(Zebris社製、WinFDM‐system)を用いた歩行周期解析を4条件のそれぞれで測定した。床反力計の項目は1)Step length(歩幅、cm)、2)Step time(歩幅率、sec)、3)Single support(単脚支持期、%)、4)Pre-swing(前遊脚期、%)、5)Stance phase(立脚期、%)、6)Swing phase(遊脚期、%)、7)Stride length(重複歩、cm)、8)Velocity(秒速、cm/sec)、9)Anterior/Posterior variability(COPの交差ポイントの前後方向への揺らぎ評価、mm)、10)Lateral variability(COPの交差ポイントの左右方向への揺らぎ評価、mm)、11)Cadence(歩行率、steps/min)である。さらに1)~6)は非麻痺側と麻痺側の値で算出した。

【説明と同意】
対象者には本研究の趣旨を十分説明し、同意が得られた患者のみ実施した。

【結果】
10m歩行速度はインソール両側ありが27.11±7.20 秒で、他の3条件と比較し最も速く、歩数はインソール両側ありが35.94±9.22 歩で、他の3条件と比較し最も少なかった。床反力計においては、1)Step lengthはインソール両側ありの麻痺側が26.11±10.26 cmで、他の3条件と比較し最も長かった。2)Step timeはインソール両側ありの麻痺側が1.01±0.30 secで、他の3条件と比較し最も短かった。3)Single supportはインソール両側ありの麻痺側が19.89±3.92 %で、他の3条件と比較し基準値の38%に最も近かった。4)Pre-swingはインソール両側ありの麻痺側が23.46±4.86 %で、他の3条件と比較し基準値の12%に最も近かった。5)Stance phaseはインソール両側ありが非麻痺側のみ:79.04±4.09 %、麻痺側のみ:67.66±6.29 %で、非麻痺側・麻痺側の双方で他の3条件と比較し基準値の60%に最も近かった。6)Swing phaseはインソール両側ありが非麻痺側のみ:20.96±4.09 %、麻痺側のみ:33.40±7.31 %で、非麻痺側・麻痺側の双方で他の3条件と比較し基準値の40%に最も近かった。7)Stride lengthはインソール両側ありが52.22±13.14 cmで、他の3条件と比較し最も長かった。8)Velocityはインソール両側ありが30.44±9.54 cm/secで、他の3条件と比較し最も長かった。9) Anterior/Posterior variabilityはインソール両側ありが3.56±2.19 mmで、他の3条件と比較し最も小さかった。10)Lateral variabilityはインソール両側ありが6.67±2.74 mmで、他の3条件と比較し最も小さかった。11)Cadenceはインソール両側ありが36.11±10.84 steps/minで、他の3条件と比較し最も大きかった。

【考察】
4条件において、10m歩行速度と歩数、床反力計を用いた歩行周期解析を測定しインソールが脳卒中片麻痺患者の歩行に及ぼす影響についての比較、検討した。本研究では両側インソール装着により非麻痺側、麻痺側の立脚期、遊脚期が基準値に近似することや歩行中前後左右でのCOPコントールの向上など多数の項目で改善傾向であった。このことが10m歩行速度と歩数に好影響を及ぼしたと考えられる。山本ら(2002)は片麻痺歩行の特徴として、歩行速度が遅い、歩行周期が長い、Stride lengthが短い、立脚後期に麻痺側のつま先離れが悪く、遊脚期にクリアランスがとれないと挙げている。また、内田ら(2008)はインソールが歩行に与える要素として移動方向の変更、推進力の増強、制動を挙げている。これらの報告や本研究により、両側インソール装着が歩行速度の向上や歩行周期の短縮、Stride lengthの延長、麻痺側の立脚後期の改善に繋がると期待される。

【理学療法学研究としての意義】
脳卒中片麻痺歩行の特徴である歩行速度の遅延、歩行周期の延長などの改善にインソールが好影響を与える可能性があると思われた。症例数を蓄積し、今後も調査を継続していくことで明快な結論が得られると考える。

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© 2011 日本理学療法士協会
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