理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PI1-298
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ポスター発表(一般)
足関節果部骨折術後における足関節背屈角度の比較
SER2とSER4において
飛永 浩一朗鳥井 泰典井手 睦
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抄録

【目的】足関節果部骨折の分類であるLauge-Hansen分類は受傷時の足部の肢位と下腿に対する距骨の動きで分類され骨折発生の程度で更に分類される。今回、受傷の足部の肢位が同じである足関節果部骨折SER2と4の足関節背屈関節可動域(他動、自動)を術後1週と2週で比較する事で骨折型を考慮した理学療法を立案すべく検討を行なったので報告する。
【対象】2007年6月からの3年間に足関節果部骨折に対し骨接合術を行なった症例のうち、1)足関節果部骨折以外の骨折を合併せず、2)足関節果部骨折の骨折型分類であるLauge-Hansenの分類に従いSER(Supination-External Rotation)2とSER4に分類され、3)術後1週以内に関節可動域訓練が開始された症例を対象とした。
【方法】術記事より、1)足関節果部骨折の骨折型(Lauge-Hansenの分類)、2)術式、診療録より3)受傷より手術までの期間、4)術後外固定の有無とその期間、5)術後1週目の足関節背屈可動域角度(他動、自動)、6)荷重時期の項目について収集した。3)から6)のそれぞれの項目においてSER2とSER4を比較するためマン・ホイットニー検定を用い、5%未満を有意差ありとした。
【説明と同意】当研究は当院が定める倫理規定に基づき行なった。
【結果】SER2は8名(男性1名、女性7名、平均年齢43±9.3歳)、SER4は7名(男性3名、女性4名、平均年齢56.0±12.0歳)であった。術式はSER2では全てプレート固定、SER4では外果に対しすべてプレート固定と内果に対し6例はtension band wiring(4例)、Acutrak(1例)、k-wire(1例)による骨接合術が施行されていた。受傷より手術までの期間は、SER2では平均9.4±1.9日・SER4では平均10.4±4.9日で、術後固定は全てシーネ固定でありその固定期間はSER2では平均2.3±3.2日・SER4では平均2.0±3.4日でいずれ有意差は認められなかった。外固定期間は手術で得られた骨折部の安定性と脛腓関節の適合性、解剖学的整復の状態により執刀医が決定した。術後1週目における足関節背屈角度を比較すると、足関節他動背屈角度ではSER2は平均9.0±0度、SER4は平均3.0±5.0度となりSER2の方が足関節背屈角度は有意に大きかった(P<0.05)。また足関節自動背屈角度ではSER2は平均]-1.0±9.8度、SER4は平均-5.0±5.8度と有意差は認められなかった。術後2週の足関節他動背屈角度は、SER2は平均15.0±5.3度、SER4は平均7.9±7.6度とSER2の方が有意に大きかった(P<0.05)。足関節自動背屈角度は、SER2は平均10.6±6.8度、SER4は平均-0.7±9.6度とSER2が有意に大きかった(P<0.05)。部分荷重もしくは全荷重が開始された時期については、SER2で術後平均9.4±1.9日、SER4で10.4±4.9日と有意差を認めなかった。
【考察】足関節果部骨折で多く見られるSER typeのSER2は腓骨遠位部の螺旋骨折を呈し、SER4では更に内果骨折もしくは三角靭帯の損傷が加わる。今回SER2と4の術後1週と2週時点の足関節背屈可動域について比較した。その結果、足関節他動背屈角度は術後1週、2週ともにSER2の方が大きかった。足関節自動背屈角度において術後1週ではSER2と4の間には有意な差はなかったが、術後2週目にはSER2が有意に大きくSER4の背屈可動域拡大は難渋していることが示唆された。足関節果部骨折術後の外固定期間と荷重時期に有意な差が認められず、足関節背屈可動域の拡大に対し影響は少ないと考えられた。當銘らは、高エネルギー外力による受傷時の軟部組織、軟骨、靭帯損傷が臨床評価を悪化させるとしている。またSER4は複数果骨折であり、関節の骨性支持低下や軟部組織損傷を伴う上、術創や術中操作が増し、術後疼痛、腫脹が強くなることも今回の結果に影響したと推察される。
【理学療法学研究としての意義】足関節他動背屈角度はSER2の方がSER4より有意に大きく、足関節自動背屈角度では術後1週では有意差がなかったものの術後2週ではSER2の有意に大きかった。つまり、足関節果部骨折受傷時の足部肢位が同肢位であっても外力の程度によって足関節背屈可動域に著明な差が現れることが示唆された。臨床場面でも骨折型を把握し早期から足関節の可動域拡大に向け理学療法を提供することが重要であることが考えられる。

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