理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PI2-260
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ポスター発表(一般)
肩関節周囲炎患者における胸椎可動性と上肢挙上時の肩関節・胸椎の動きの関係について
鈴木 加奈子塩島 直路
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キーワード: 肩関節周囲炎, 肩関節, 胸椎
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抄録
【目的】臨床において,肩関節疾患を有する症例では,上肢挙上動作において,肩甲上腕関節,肩甲骨の動きと共に,体幹の動きも制限されていることがある。これに対して,体幹の可動性を改善することにより,上肢挙上時の動きが改善することがある。肩関節屈曲時には,上腕骨の動きに伴い下位胸椎の動きがみられること,肩関節疾患を有する症例では,中・下位胸椎の可動域が低下している場合があることが,諸家により報告されている。しかし,坐位での体幹の可動性と,上肢挙上時の肩関節,体幹の動きの関連について検討した報告は散見されない。肩甲骨は胸郭との間に機能的な関節を成すため,特に肋骨と関節を成す胸椎の可動性は,上肢挙上時の胸椎,肩甲骨,さらには肩関節の動きに関連していることが考えられる。そこで本研究では,肩関節周囲炎患者を対象に,坐位での胸椎の可動性と,上肢挙上時の肩関節,胸椎の動きの関係について検討した。これにより,上肢挙上動作改善に対する評価,治療を行う際の一助とすることを目的とした。

【方法】対象は肩関節周囲炎患者10名(左:7名,右:3名,年齢:65±8.8歳)とした。測定肢位は,自然坐位,坐位での体幹最大屈曲位(屈曲坐位),体幹最大伸展位(伸展坐位),両上肢最大前方挙上位(挙上位)の4肢位とした。被験者に自動で測定肢位を保持させ,スパイナルマウス(インデックス社製)を用いて,第7頚椎から第3仙椎までの棘突起上をなぞり,胸椎彎曲角度(第1胸椎と第2胸椎間の角度から,第11胸椎と第12胸椎間の角度までの合計)と,体幹傾斜角度(第1胸椎と第1仙椎棘突起を結ぶ線と,垂線とのなす角度)を計測した。挙上位では,胸椎彎曲角度計測後,ゴニオメータを用いて罹患側の上肢前方挙上角度(上腕骨と垂線とのなす角度)を計測した。その後,上位胸椎角度(第1胸椎と第2胸椎間の角度から,第6胸椎と第7胸椎間の角度までの合計),下位胸椎角度(第7胸椎と第8胸椎間の角度から,第11胸椎と第12胸椎間の角度までの合計),上肢挙上角度(上肢前方挙上角度-体幹傾斜角度)を算出した。上・下位胸椎角度は,数値が大きい程,屈曲が大きくなることを示し,後に,屈曲坐位,伸展坐位,挙上位の値から,自然坐位での値を減じて各々の変化量を算出した。統計にはSPSS ver.12.0Jを用い,Pearsonの相関係数を算出した。変化量について,坐位での上・下位胸椎角度と,挙上位での上肢挙上角度,上・下位胸椎角度の相関について検討した。

【説明と同意】被験者に本研究の趣旨と内容,参加は自由であることを説明し,同意を得た上で研究を行った。

【結果】屈曲坐位での上位胸椎角度と,挙上位での上肢挙上角度の間に有意な相関(r=0.68,p<0.05)がみられ,屈曲坐位での上位胸椎屈曲が大きいほど,挙上位での上肢挙上角度が大きくなった。伸展坐位での下位胸椎角度と,挙上位での下位胸椎角度の間(r=0.93,p<0.001),屈曲坐位での上位胸椎角度と,挙上位での下位胸椎角度の間(r=-0.82,p<0.01)に有意な相関がみられ,伸展坐位での下位胸椎伸展,屈曲坐位での上位胸椎屈曲が大きいほど,挙上位での下位胸椎伸展が大きくなった。

【考察】本研究の結果,上位胸椎屈曲の可動性が大きいほど,上肢挙上角度が大きくなるという関連性が示された。このことから,坐位での上位胸椎屈曲の可動性を増大させることが,上肢挙上角度増加につながる可能性があると考えられる。また,坐位での下位胸椎伸展と上位胸椎屈曲の可動性が大きいほど,上肢挙上時の下位胸椎伸展の動きが大きくなるという関連性が示された。このことから,坐位での下位胸椎伸展と上位胸椎屈曲の可動性増大が,上肢挙上に伴う下位胸椎伸展の動きの増加に関係することが考えられる。従って,上肢挙上に伴う下位胸椎伸展の動きの改善を目標とする場合には,坐位での下位胸椎伸展に加え,上位胸椎屈曲の可動性に着目した,評価,治療を行うことが有用となる可能性があると考える。坐位での上位胸椎屈曲の可動性は,上肢挙上角度,および上肢挙上時の下位胸椎伸展の動きに関与することが示された。このことから,胸椎の伸展可動性のみならず,上位胸椎屈曲可動性も上肢挙上動作に関係していることが考えられる。今後は,胸椎可動性と肩甲骨の動きの関係,また,胸椎の可動性拡大に対するアプローチ後の肩関節,肩甲骨,胸椎の動きの変化について検討を加える。

【理学療法学研究としての意義】上肢挙上時の下位胸椎,肩関節の動きには,上位胸椎屈曲の可動性が関与することが示された。本研究の結果が,上肢挙上を改善するための一方法として応用できる可能性が示された点で,有意義と考える。
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© 2011 日本理学療法士協会
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