理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PI1-481
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ポスター発表(一般)
理学療法学科学生の不安要因について(第2報)
1年間の追跡調査
堤 文生
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抄録

【目的】理学療法学科に在籍する学生は、入学時から学業成績や進級判定、理学療法士としての適性など不安と期待を抱きながら2年次・3年次・4年次へと進級していく。更に、3年次・4年次ともなれば臨床実習・国家試験・就職など様々な不安を抱えることとなる。今回、1年間の追跡調査(計3回)を行い、1年次・2年次・3年次学生の不安推移を分析した。
【方法】対象は、理学療法学科2年生74名、3年生79名、4年生71名である。学生生活における不安について、30項目のアンケート調査表を作成した。例えば、「単位が取得できるか不安である」、「生活費や学費など経済的に不安がある」、「対人関係がうまく出来ず不安である」、「臨床実習において課題を乗り切れるか不安である」、「希望する病院や施設に就職できるか不安である」などである。回答は「1、非常に不安である」、「2、不安である」、「3、どちらともいえない」、「4、不安はない」、「5、全く不安はない」の5件法とした。調査は、平成21年10月(1回目)、平成22年4月(2回目)、平成22年10月(3回目)に集合調査方式にて実施した。各学年別に、30項目の不安推移を関連多群(フリードマン検定、多重比較法)にて検定した。また、30項目の調査結果(総数n=622)より因子分析を用いて第1~第3因子を抽出した後、全例の因子得点を算出した。第1~第3因子得点及び不安得点(30項目の合計点)より、各学年における1年間の不安推移を関連多群(二元配置分散分析、多重比較法)にて検定した。
【説明と同意】アンケート調査に際し、本研究の趣旨を説明し同意と求めた上で実施した。
【結果】各アンケート項目の不安推移において、1年次は12項目、2年次は15項目、3年次は19項目に有意な変化を示した。学年が進むほどに不安項目が増加することが窺える。不安要因の解析として、622名の30項目での調査結果をバリマックス回転後の因子分析(因子負荷量≧0.40)を行った。第1因子として「単位取得、判定結果、学習方法、講義理解、卒業」など学習因子(寄与率13.8%)、第2因子として「就職、将来性、国家試験」などの将来因子(寄与率9.4%)、第3因子として「適性、退学、生活費や学費、奨学金」など経済因子(寄与率8.7%)が潜在因子として抽出された。これら3因子の累積寄与率は31.9%であった。各因子得点間の相関係数は、r=-0.134~0.095と低く、各因子間の因果関係が薄いといえる。不安得点の推移では、1年次学生は進級とともに不安が高まる傾向を示し、2年次学生は軽微な変化を示したのに対し、3年次学生は不安が急激に減少した。これは臨床実習を無事に終えた安堵感の顕れと解釈される。学習因子では、1年次学生に有意な変化は示さないが、3年次学生は臨床実習前後において有意差を示した(P<0.01)。2年次学生も臨床実習を目前に控え、不安が有意に減少している(P<0.01)。経済因子では、1年次学生で適性や学費・アルバイトとの両立などで不安が高まっている(P<0.01›。各学年を性別、成績別(上位・中位・下位)に1年間の不安推移を検討した結果、概ね不安得点と学習因子に有意な変化を示した(P<0.01 )。
【考察】一般に不安を感じることは学生の常である。しかし学年毎に学習目標に相違があり、障壁となる事柄が異なっている。それらを乗り越えることで理学療法士としての道が開けるといえる。学習面では成績に関する不安が非常に高く、単位の取得に敏感に反応する姿勢がみられた。臨床面では、実習期間中での課題遂行や人間関係、就職先や安定性などに不安を抱いていることが窺える。経済面では、アルバイトと学業との両立や生活費・学費、理学療法士としての適性などに不安を感じている。各学生の因子得点を2次元平面に散布しその不安特徴を解析する。3回の不安度をグラフ上に折れ線で結ぶことで、各個人の不安推移を観察しえる。
【理学療法研究としての意義】学生の不安に関して、成績不良学生のみが抱える問題と一概に言えない。そこで、多くの学生が抱える不安要因を解析することが学生指導に重要である。進級するに伴い目標課題が複雑化する中で、不安解消に繋がる教育指導が望まれる。

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© 2011 日本理学療法士協会
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