理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
廃用症候群の予後予測
─リハ開始時のどのような因子がFIM利得に影響するか?─
松本 元成
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キーワード: 廃用症候群, FIM, 予後予測
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p. Db1213

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抄録

【はじめに、目的】 廃用症候群の理学療法は、廃用に至る疾患が多岐にわたり、その障害像も多様である。その為臨床上正確な予後予測は、困難であることが多い。しかし廃用症候群に対して理学療法を実施する場合、「介入による改善の可能性」や「改善に要する見込み期間」の記載が義務つけられており、診療報酬上も正確かつ早急な予後予測が要求されている。本研究の目的は、廃用症候群患者のリハ開始時における因子の中から、最終的なFIM利得に影響する因子は何かを検討し、正確な予後予測の一助を作成することである。【方法】 対象は、平成22年4月1日から平成23年7月31日までに、当院一般病棟より回復期リハビリテーション病棟(以下、回リハ病棟)に転科された廃用症候群の患者46名で、その内死亡退院、状態悪化による一般病棟への転科、入院期間が1週間以内、リハ開始1週間以内の血液データが不明なものは除外した38名である。対象者の年齢、入院からリハ開始までの日数、入院日数、回リハ病棟におけるFIM利得、リハ開始時の嚥下能力(藤島のグレード)、リハ開始より1週間以内の血清アルブミン値(以下、ALB)を診療録より後方視的に調査した。統計処理はFIM利得と各因子との相関をSpearmanの順位相関係数を用いて分析した。平成23年の全国回復期リハ連絡協議会の報告によれば、廃用症候群患者のFIM利得の全国平均は10.4点である。それに則り、FIM利得が11点以上の群を改善群、10点以下を非改善群の2群に分類し、Mann-WhitneyのU検定を用いて各因子について分析した。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究はヘルシンキ条約に則り、臨床研究に関する倫理指針を遵守した。また個人が特定できる情報は削除し、個人の同定を不可能とした。【結果】 対象の平均年齢は81.7±7.8才、リハ開始までの平均日数は7.5±6.4日、平均入院日数は87.5±34.0日であった。分析の結果、FIM利得とリハビリ開始時の嚥下能力(r=0.39)、およびFIM利得と入院からリハ開始までの日数(r=0.24)とに正の相関を認めた。FIM利得改善群は16名、非改善群は22名であった。改善群のリハビリ開始時の嚥下能力の平均は9.3±1.2、非改善群は5.95±4.23で2群間に優位な差を認めた(p<0.05)。その他の項目においては、改善群と非改善群とで有意な差を認めなかった。【考察】 リハ開始時の嚥下能力は、FIM利得との相関があり、また改善群と非改善群において優位な差を認めた。リハ開始時の嚥下能力とADLの回復に関連があることが示唆された。今回の研究ではFIM利得とALB値との相関や、群間におけるALB値に優位な差を認めなかった。ALB値には半減期があり、血液データ上、開始時に低栄養と思われる状態であっても、嚥下能力が保たれていれば、栄養確保しつつ負荷量に配慮した理学療法を実施することにより、ADLの改善が期待できる。リハ開始時の嚥下能力を把握することは廃用症候群の予後予測に有用である可能性があると考える。介入当初より他職種との連携を図り、PTにおいても摂食嚥下面の評価介入を行う必要性があることも示唆される。また、入院からリハ開始までの日数とFIM利得に相関を認めた。疾患の重症度が高く、臥床期間が長期化することで、ADLの回復を妨げられること、および早期のリハ介入がADLを向上させる可能性を示唆するものと思われる。【理学療法学研究としての意義】 廃用症候群の予後予測において、FIM利得を用いてその傾向を明らかにすることを試みた。リハ開始時の嚥下能力とリハ開始までの日数を把握することが予後予測の一助となることが示唆された。開始時の嚥下能力とリハ開始までの日数は、リハ介入当初より、容易に把握することが出来るため、臨床的にも簡便な指標となり得ると考える。

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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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