理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-P-03
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ポスター発表
理学療法密度の地域偏在の現状と要介護度の地域特性
江口 雅彦
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抄録
【はじめに、目的】 理学療法士の養成校は2012年7月現在、学校総数251校、入学定員13,265名であり、毎年1万人弱の国家試験合格者を排出するにいたっている。一部では理学療法士の供給過剰を指摘する声もあるが、依然として高い就職率を保ち、かつ今後のさらなる高齢化にともない介護保険分野での需要増が見込まれている。一般的に理学療法士の数に関しては西高東低との指摘はあるが、都道府県別にその偏在を明確に示したものはなく、またその地域偏在と要介護度との関係性を調査したものも見当たらない。そこで本研究は、理学療法士数の地域偏在の現状を明らかにするとともに、要介護度の地域特性をあわせて分析し、その間に何らかの関係性が見いだせるのかを検討するものである。【方法】 日本理学療法士協会公表(2012年6月)の都道府県別理学療法士数、厚生労働省介護保険事業状況報告(2012年7月)および医療施設調査・病院報告(2010)のデータより、その地域偏在、地域差について推計を行った。理学療法士の地域密度は理学療法士の全国集計数(協会員77,844名を組織率0.784で除したもの)を、日本の人口で除したものを「標準PT率」とし、次に各都道府県の人口に標準PT率を乗じ、全国平均と同じ条件で理学療法士数を算出する。これを「都道府県標準PT数」とし、それに各都道府県の実際の理学療法士数をこの都道府県標準PT数で除すると全国平均を1(100%)とした各都道府県の「都道府県PT指数」が得られる。一方の要介護度の地域特性に関しても同様の手順で推計を行うが、前期高齢者と後期高齢者では要支援・要介護状態となる割合が大きく異なるため分ける必要がある。さらに、前期高齢者、後期高齢者それぞれの要介護度2以下(前期・後期軽度認定者)と要介護度3以上(前期・後期重度認定者)に分割した。算出方法は、全国集計データで前期高齢者、後期高齢者に区分し要介護度(要支援)別認定率である「標準認定率(前期・後期の軽度および重度)」を算出。次に各都道府県の前期高齢者、後期高齢者に標準認定率を乗じ各都道府県の「標準認定者数」を求め、これに各都道府県の実際の要介護度別認定者数を標準認定者数で除し「認定率指数(前期・後期の軽度および重度認定率指数)」を求めた。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は、公的公表データを用いたデータ分析であり、倫理的配慮が必要な研究ではない。【結果】 都道府県PT指数は、栃木0.66、秋田・東京・神奈川0.69と関東以北で低く、高知2.64、長崎1.90など四国・九州で高かった。都道府県PT指数は同様に推計した病床数指数(一般と療養を加えたもの)と高い相関(r=0.81)を示した。また、要介護度の認定率指数は、前期軽度認定率指数は山梨0.64、福井0.72など関東・東海・甲信越で低く、高値を示したのは大阪1.44、和歌山1.31など西日本が多かった。前期重度認定率指数は、佐賀0.81、奈良0.86で低く、沖縄1.35、青森1.26が高い値を示したが地域偏在は見られなかった。他方、後期軽度認定率指数は山梨0.76、茨城0.78などで低く、長崎1.30、大阪1.22と西日本が高い値を示した。後期重度認定率指数は愛知0.89、静岡0.90で低く、沖縄1.25、秋田1.15で高値を示したが明らかな地域偏在はみられなかった。【考察】 今回、理学療法密度の地域偏在を観察したが、東北・北陸・関東甲信地方で低密度であるとの結果が得られた。特に東北6県ではいずれも低い値を示し、人口あたりの養成校の数、養成定員も全国平均を下回った。理学療法密度の低下は集中的なリハビリテーションを受ける機会の減少をもたらし結果として障がいの重篤化をもたらす可能性がある。よって理学療法密度と要介護度の地域特性の関係性もあわせて分析を行ったが、その間に特に相関関係は認められなかった。このことは、単に理学療法密度の高低が直接要介護度に影響を与えるものではないことを示しており、今後は介護保険分野の理学療法密度との関係性を見ていく必要がある。一方、認定率の地域差は大きく前期軽度認定率は山梨、大阪間で2.25倍、前期重度認定率は佐賀、沖縄間で1.67倍、後期軽度認定率は山梨、長崎間で1.71倍、後期重度認定率は愛知、沖縄間で1.40倍の開きがみられた。もちろん要介護度の地域特性に関しては今回用いたマクロデータの分析では限界があり、高齢化率、介護保険の申請率、サービス事業者の特性など様々な要因が関与しており、今後2次医療圏単位のミクロデータの詳細な分析が必要である。【理学療法学研究としての意義】 理学療法密度の地域偏在の報告はなく、今後の地域医療政策へ示唆を与えるものである。また、要介護度の地域特性については介護保険分野の理学療法密度などとの関連性をみることで維持期の理学療法の有用性を示すことができると考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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