抄録
【はじめに】肺炎は、脳血管疾患を抜き本邦における全疾患の死亡原因の第3位となった。また、85歳以上では第2位、90歳以上では第1位で近年増加傾向である。当院でも、毎年多くの肺炎症例が入院加療を要し理学療法(以下PT)を行っている。日本リハビリテーション病院・施設協会の調査によれば、廃用症候群の発生は入院後5日以内のリハビリ開始によって、防止できると報告しており、また先行研究においても肺炎症例の急性期における早期リハビリの必要性について多く報告をしている。しかし、肺炎症例のうち早期介入が行えなかった症例に関する報告は少ない。当院においては、早期PT介入により離床が進む症例もいれば、安静臥床期間が長く介入開始から離床までが遅延し廃用となり日常生活動作(以下ADL)が低下する症例を経験する。また、Michaelらは、市中肺炎の診断は、症状の急速な寛解や機能回復に関わる事から、重症度を評価する必要があると報告している。そこで、Pneumonia Serverity Index(以下PSI)を用いて肺炎の重症度分類別に安静臥床期間の遅延した症例の離床の特性を検証した。【方法】対象は、平成23年7月19日から12月31日、平成24年5月1日から8月15日の間に当院内科病棟に入院加療を要し、「肺炎」または「肺炎後廃用症候群」の診断で安静臥床から離床を目的に理学療法介入があった125症例のうち、入院からリハビリ開始までの期間が5日以内を除外した55症例(うち男性37名、年齢80.9±7.7歳)とした。なお、入院前ADLが常時臥床状態であった症例は除いた。離床に関わる因子を電子カルテより後方視的に収集した。測定項目は、基本情報(年齢、性別、身長、体重、BMI)、PSI、合併症の有無(腫瘍性疾患、肝不全、心不全、腎不全、脳血管疾患、認知症)、安静度(ベッド上:端座位:車椅子乗車:フリー)、経過期間は、安静臥床期間(入院からPT開始日までの期間)、介入期間(PT開始から車椅子座位の開始日までの期間)、離床期間((入院から連続20分以上の車椅子座位の開始日までの期間)とした。分析は、対象症例をPSIの重症度別にclass3、4、5に分類し、各測定項目についてKruskal-Wallis検定、χ2検定による3群間比較を行った。また、Kruskal-Wallis検定の結果、有意差の得られた項目について多重比較分析を行なった。統計には、統計ソフトR2.8.1を使用し、いずれも有意水準は5%とした。【倫理的配慮】本研究は、研究内容や倫理的配慮に関してヘルシンキ宣言に基づいた当院の倫理委員会の承認を受け実地された。【結果】3群間比較において、基本情報では、class3とclass5(p<0.01)、class4とclass5(p<0.05)のそれぞれにおいて、年齢に有意差が見られた(class:77.9±7.9歳、class4:81.0±8.0歳、class5:83.9±9.0歳)。また経過期間では、class3とclass4(p<0.05)、class3とclass5(p<0.01)のそれぞれにおいて、介入期間に有意差が見られた(class3:2.92±5.42日、class4:8.88±11.2日、class5:9.0±9.57日)。合併症の有無に関しては、認知症に有意差が見られた(class3:合併率7.1%、class4:合併率55.6%、class5:合併率35.7%)(p<0.05)。その他の基本情報、合併症の有無、安静度、経過期間には有意差が見られなかった。【考察】本研究では、年齢と介入期間、認知症に有意差がみられた。樋口らの研究によるとPSIのclass5に85歳以上の死亡例が集中し高齢層になるに従って死亡率が高くなると報告している。また、池田らは、認知症の合併は肺炎の予後に影響を与えると報告している。今回これらの報告と同様に年齢や重症度、認知症の有無が離床に影響を及ぼす事が示された。つまり、安静臥床が6日以上で認知症を合併した高齢者、重症度が高い症例は、介入期間が遅延する可能性がある為早期リハビリ介入の必要性が示唆された。そのため、今後は画一的なPT依頼のシステムの構築などが必要と考える。本研究において、更に検査値データ、レントゲン所見、HDS-Rの評価、入院前のADLなどを明らかにする事で肺炎の重症度分類別に安静臥床期間の遅延した症例と離床の関連性を検証する事ができると考える。【理学療法学研究としての意義】肺炎の重症度分類別に安静臥床期間の遅延した症例と離床の関連性についての報告は少なく、今後も更に細かい因子を検証して早期リハビリから離床への有用性を検証していく。