理学療法学Supplement
Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-C-0888
会議情報

ポスター
超音波画像診断装置を用いた成人男性の大腿四頭筋厚及び膝伸展筋力と握力の関連について
津覇 健太郎立津 統田本 秀禎山内 裕樹金城 康治
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに,目的】近年,超音波画像診断装置を用いて軟部組織の形態評価や定量的に筋厚測定する方法として広く用いられている。CT(Com-puted Tomograephy)やMRI(Magnetic Resonance Imaging)と比べ安価であり,測定の妥当性も確認されており,安全で非侵襲的かつ再現性も高いとされている。しかしその反面,検査を行うにあたり,場所の問題や検査速度に限界があり多人数の評価に適していないなどの問題点もある。一方,握力は全身的な身体機能を反映し,下肢筋力との相関も深いとされ,安全かつ簡便に行える評価法として広く用いられている。また,握力と膝伸展筋力の相関を示した報告は多いが,握力と大腿四頭筋厚の相関を示した報告は少ない。そこで,本研究は成人男性を対象に握力と各組織筋厚及び膝伸展筋力との関連について検討したのでここに報告する。【方法】対象は健常成人男性20名(年齢:24.8±3.9歳)とし,筋組織厚の計測には超音波測定装置(ALOKA Prosound α6)を用い,計測箇所は膝蓋骨上縁より10cm上方とし,大腿直筋・内側広筋・中間広筋・外側広筋の安静時及びセッティング時の各筋厚計測を行った。測定肢位は膝関節を完全伸展位させた背臥位とし測定側は右下肢で統一した。膝伸展筋力の測定はハンドヘルドダイナモメーター(以下HDD)を用い,測定肢位は端坐位,股関節・膝関節を90°屈曲位とし,筋厚測定を行った同下肢を2回計測し測定値の高い方を代表値とした。握力の測定は右手で2回計測し測定値の高い方を代表値とした。統計処理は握力と各筋組織厚値及び膝伸展筋力の各測定値についてSpearmanの相関係数を求め,有意水準は5%未満とした。【結果】膝伸展筋力と握力の計測値はそれぞれ,膝伸展筋力で53.4kg±12.4kg,握力で51.4kg±7.34kgであった。各筋厚測定値は安静時の大腿直筋で1.22cm±0.29cm,内側広筋2.47cm±0.43cm,中間広筋1.35cm±0.32cm,外側広筋1.34cm±0.54cm,セッティング時の大腿直筋で1.71cm±0.38cm,内側広筋3.67cm±0.53cm,中間広筋1.72cm±0.32cm,外側広筋1.65cm±0.64cmであった。相関分析の結果,握力と有意な相関が認められた項目は,膝伸展筋力(r=0.594,p<0.007),安静時内側広筋(r=0.449,p<0.044),安静時中間広筋(r=0.463,p<0.038)セッティング内側広筋(r=0.583,p<0.009)セッティング中間広筋(r=0.480,p<0.031)であった。一方大腿直筋及び外側広筋との間には有意な差は認めなかった。【考察】本研究は成人男性を対象に,身体機能と関連が深いとされる握力に注目し,更に超音波画像診断装置による大腿四頭筋厚の測定及び膝伸展筋力の測定を行い,各計測値と握力の関連を検討した。その結果,握力と内側広筋厚及び中間広筋厚,膝伸展筋力の間に有意な相関が認められた。金指らは若年女性,池田らは高齢女性を対象とし,それぞれ握力と膝伸展筋力に有意な相関がある事を報告している。成人男性を対象とした本研究においても同様の結果が出ており,男女問わず幅広い年齢において握力が膝伸展筋力と有意な相関ある事が示唆された。また,握力と内側広筋厚・中間広筋厚の有意相関が存在した点について,一般に健常膝関節において伸展位で170°~175°の生理的外反があるとされ,中間・内側に位置する広筋は膝伸展に対し最も張力を得やすかった事と,また,紡錘筋である大腿直筋と比較し,内側広筋・中間広筋が横断面積当たりの筋出力が高いとされる羽状筋であった事などが推察される。大腿直筋と外側広筋に有意差が認められなかった理由として,大腿直筋は四頭筋の中で唯一腸骨に起始を持つ長筋であり,本研究での測定箇所(膝蓋骨上縁10cm)では妥当ではなかった事が考えられ,外側広筋に関しても内側広筋と逆の理由で,測定肢位が筋力を発揮しにくい肢位であった為に相関が無かったものと思われ,今後検討を要した。以上より,成人男性において握力測定は膝伸展筋力及び,内側広筋厚・中間広筋厚と相関があり,簡便に膝関節伸展機能を推察できる一評価法である事が示唆された。【理学療法学研究としての意義】本研究は,身体機能で重要とされる大腿四頭筋の評価を握力との相関で示しており,より短時間で多人数に同時に行える評価法として臨床で使用できるものと考えられる。

著者関連情報
© 2015 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top