理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-01-1
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口述演題
成人脊柱変形患者に対する後方矯正固定術後の日常生活動作への影響
近藤 亮永房 鉄之美津島 隆戸川 大輔長谷川 智彦大和 雄小林 祥大江 慎坂野 友啓三原 唯暉松山 幸弘
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抄録

【はじめに】成人脊柱変形とは,思春期特発性側弯症の遺残,変性による後側弯変形,骨粗鬆症性椎体骨折を伴う変形など多くの病態があり変形形態・部位も様々である。また患者は,腰背部痛,下肢痛・神経障害,整容心理,内蔵症状(呼吸障害,消化器障害)など多彩な愁訴を訴える。近年,脊椎手術における手術機器の向上と技術発展により,重度成人脊柱変形患者への矯正手術が可能となってきた。Hartらは脊椎固定術にて多くの愁訴は改善し健康関連QOLは改善するが,多椎間に行われた矯正固定術で脊柱は柔軟性を失い,その為術後,体幹屈曲を主とする日常生活動作については困難を認めると報告している。【目的】成人脊柱変形に対して施行した後方矯正固定術後患者において,日常生活動作はどの程度障害が出るかを明らかにし,理学療法による解決策を探ること。【方法】対象は2012年1月から成人脊柱変形に対して胸椎から腸骨までの矯正固定術を施行した98例(平均68.3歳,女性86名,男性12名)とした。術後12ヶ月まで硬性・軟性コルセットを装着し,骨癒合が得られるまで過度な体幹前屈・回旋動作は制限している。評価項目は術前,退院時,術後6ヶ月,術後12ヶ月,術後24ヶ月の術後困難となり得る動作(a.歩行,b.爪切り,c.仰臥位で寝る,d.排便後の処理,e.ズボンをはく動作,f.床のものを拾う動作,g.前かがみ仕事,計7項目,Disability Score(DS)として10段階評価(1:とても容易~10:とても困難))と術前,術後6ヶ月,術後12ヶ月,術後24ヶ月の健康関連QOL(Oswestry Disability Index(ODI),Scoliosis Research Society-22(SRS-22))とした。統計解析は各DS,ODI,SRS-22の推移の検討にはWilcoxonの符号付き順位検定を用いて分析した。解析にはSPSS,Statistics21を使用し,有意水準を5%未満とした。【結果】健康関連QOLは術前と比べて術後6ヶ月,術後12ヶ月,術後24ヶ月に有意な改善を認めた(ODI 47.1→35.6→34.6→33.1,SRS-22は2.6→3.2→3.3→3.4(p<0.001))。術後動作解析では,術前と比べて退院時,術後6ヶ月,術後12ヶ月,術後24ヶ月に有意に改善を認めたDSはa.7.5→6.1→5.7→5.7→5.1,有意に困難感を認めたDSはb.4.8→8.7→8.8→8.0→8.0,d.3.6→5.8→5.3→5.0→4.7,e.4.4→7.4→7.0→6.5→5.7,f.4.7→8.1→7.9→7.2→6.8,g.6.0→8.7→8.7→8.1→7.6であった(p<0.001)。【結論】成人脊柱変形に対する矯正固定術後,健康関連QOLは改善した。一方で,爪切りやかがみ動作など前屈動作は術後2年でも術前より困難であった。それらの困難動作は,術後2年まで徐々に改善傾向を認めているので,今後更に調査が必要である。術後理学療法は,骨癒合や体幹前屈動作の可否を医師と確認しながら,術後の経過時期に合わせた補助具や四肢可動範囲を駆使した動作の指導が重要である。

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© 2016 日本理学療法士協会
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