理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-04-1
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口述演題
リバース型人工肩関節置換術後の自動可動域とJOAスコアについて
関節鏡視下腱板再建術との比較
大野 拓哉金並 将志吉田 宏史高岡 達也定松 修一田口 浩之
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抄録

【はじめに,目的】リバース型人工肩関節(Reverse Total Shoulder Arthroplasty:RSA)は,平成26年4月から本邦で使用可能となったが,治療成績についての報告はほとんどない。そこで今回RSAの利点・問題点を明らかにするため,従来から行われている関節鏡視下腱板修復術(ARCR)と比較検討したので報告する。【方法】対象は平成26年4月から平成27年3月までの間に,腱板損傷に対しRSAを施行した11症例11肩(男性4名,女性7名,平均76.5±4.2歳),ARCRを施行した12症例12肩(男性7名,女性5名,平均71.3±6.7歳)とした。検討項目は日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(JOAスコア)及び肩関節自動可動域の屈曲と外旋において術前・術後3ヶ月・6ヶ月の各項目を評価し2群間比較を行った。統計学的処理にはMann-WhitneyのU検定を用い,有意水準は5%未満とした。また術後6ヶ月時点での合併症の有無を調査した。【結果】術後リハビリテーション経過について,RSAの装具固定期間が術後平均22.3±2.7日,可動域運動開始が術後平均15.3±4.0日であった。ARCRはすべての症例において,装具除去・可動域運動開始ともに術後28日目であった。評価結果について,それぞれ術前・術後3ヶ月・術後6ヶ月の順に記載する。自動屈曲可動域はRSAが平均45.5±28.6°・115.5±12.1°・130.0±15.7°,ARCRは平均55.0±5.5°・90.4±23.0°・122.1±32.6°であり,術後3ヶ月のみ有意差がみられた(p<0.01)。外旋はRSAが平均31.4±20.7°・7.7±13.7°・11.4±16.0°,ARCRは平均30.8±21.6°・18.8±21.0°・29.2±26.4°であり,術後3ヶ月と6ヶ月で低値を示した(p<0.05)。JOAスコアはRSAが平均42.4±9.4点・70.5±11.3点・79.1±9.6点,ARCRは平均50.5±8.4点・59.3±11.1点・77.8±11.9点であり,術後3ヶ月のみ有意差がみられた(p<0.05)。全ての症例に術後合併症は認められなかった。【結論】RSAはARCRと比較し術後3ヶ月の評価で,自動屈曲可動域とJOAスコアの有意な向上がみられた。RSAでは求心位置を内側且つ下方に置換することにより三角筋の張力が向上する。また装具固定と可動域運動の短縮により,ARCRと比して早期に機能回復が可能であることが示唆された。RSAの外旋可動域では術後3ヶ月と6ヶ月で低値を示した。RSAでは手術の際に肩甲下筋を切離している。そのため脱臼予防の観点から術後の外旋可動域運動が制限されており,術後6ヶ月まで可動域制限が残存したと考える。今回の評価では外旋可動域とADLの関連性を明らかにできておらず,今後の課題である。さらに多くの症例と長期経過を検討し,RSAの術後理学療法構築に努めていきたい。

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© 2016 日本理学療法士協会
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