理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-06-6
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口述演題
どのような急性期早期離床が,回復期後の大腿骨頸部/転子部術後アウトカムに影響を及ぼすか
~地域連携パスを用いた横断調査より~
伊集院 万人広田 美江
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抄録

【はじめに】大腿骨頚部/転子部骨折ガイドラインのリハビリテーションでは術翌日からの座位,早期歩行練習を推奨している。しかし,転帰時アウトカムとの関連を明らかにした十分な報告は見当たらない。また,臨床では疼痛や術後全身状態不良など困難な場合が多い。その中で術後患者において病棟トイレへの排泄希望は,急性期離床の大きな動機になっている強い印象がある。【目的】急性期離における床時期やトイレへの移動様式が回復期後のアウトカムに影響するかを地域連携パスを用い,後方視的に調査する事。【対象】2013年1月~2014年3月まで当院から転院し地域連携パス転帰報告書を得られた41例。(年齢:81.8±8.43歳。骨折型:頚部30例 転子部11例。術式:人工骨頭置換術23例 骨接合術18例。受傷前居住:自宅37例 病院2例 施設2例。受傷前移動様式:独歩22例 伝い歩き5例 杖9例 歩行車5例。)【方法】A:手術日から端座位開始までの日数,B:手術日から病棟トイレへの移動開始までの日数,C:術一週後病棟トイレまでの移動様式,D:回復期から在宅転帰時の歩行様式をそれぞれ早期離床の指標とした。急性期から回復期への転帰時(急性期)と回復期から在宅への転帰時(回復期)に比較できる項目を抽出した。急性期,回復期での日常生活動作獲得点数,股関節屈曲可動域,歩行様式や移動様式,連続歩行距離,10m歩行速度,転帰日数,回復期介入日数,年齢などを比較値とした。各A~D早期離床基準に対して比較値との関係性や有意差を検討した。【統計処理】統計ソフトJMP.9で名義ロジスティック解析,回帰分析を用い危険率は0.05%未満とした。【結果】手術一週後トイレ移動能力(床上・車椅子群:22名,歩行器・杖歩行群)と自宅退院時歩行様式(独歩:9例,伝い歩き:4例,T杖:16例,歩行器12例,車椅子0例)は,有意差がみられた。(P<0.01,F=14.73,R2=0.40)退院時歩行様式と年齢では,独歩群(9例)が歩行器群(12例)に対して有意に若い年齢であった。(p=0.03,R2=0.21)退院時歩行様式と術後トイレ移動獲得日数では,独歩群(9例)と杖群(16例)が,歩行器群(12例)に対して有意に短い日数で獲得できていた。他の早期離床基準では,比較値に有意差はみられなかった。【結論】 早期離床を進め,病棟トイレまでの早期移動開始は,回復期後の移動様式に影響し,年齢と共に重要である可能性が示唆された。患者自身のトイレ希望などの必要に合わせて離床を行う合理的で有効な方法と考えられる。しかし,全身状態や疼痛など患者病態指標や運動・活動量の客観的な急性期理学療法評価が不十分であり,入院前生活獲得に効果的な地域連携パス再検討をしていく必要を痛感した。

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© 2016 日本理学療法士協会
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