理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-08-5
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口述演題
インパルス応答を用いた膝関節振動計測方法の検討
相本 啓太太田 進近藤 和泉
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抄録

【はじめに,目的】変形性膝関節症(膝OA)は,高齢者で最も一般的な運動器疾患の1つであり,関節やその周辺の構造変性により,疼痛や変形をきたす。膝OAの発症要因としては,関節構成体の生物学的変化や力学的特性,構造的変化が指摘されている。関節構成体の変化の特徴には,軟骨弾性の低下が報告されている。膝OA者では,軟骨弾性の低下による衝撃吸収作用の低下に伴い,健常者と比較して,衝撃が膝関節間を伝達しやすくなることが考えられる。今回,膝の衝撃吸収作用を調べるために,インパルス応答と呼ばれる方法を用いた。インパルス応答とは,インパルスと呼ばれる非常に短時間の力を入力したときのシステムの出力のことである。本研究方法が確立できれば,簡易に早期の膝OA状態の把握ができ,膝OA予防に貢献できることが考えられる。本研究の目的は,膝関節の衝撃吸収作用について,インパルス応答により生じる振動計測方法確立のため,信頼性を求めることである。【方法】被験者は,女性若年健常者10名,平均年齢21歳とした。計測肢位は,膝関節屈曲20°で25kgを荷重した立位とした。インパルスを与える加圧には,取っ手を定位置まで引いて離すことで,一定量の加圧が可能な加圧器を作成した。加圧器には,ロードセルが内蔵してある。加圧量は,約20Nとし,加圧部位は,内側上顆と滑車稜とした。加圧による下肢全体の振動を防ぐために,大腿部を器具で抑えた。ロードセルの加圧値は,サンプリング周波数4kHzにて,Power Lab(ADINSTRUMENT社)に取り込んだ。インパルスにより出力された振動の計測には,1軸加速度計(メディセンス社)を使用した。1軸加速度計は,膝関節裂隙から遠位に5cm,10cm,15cmの部位に装着した。加速度データは,サンプリング周波数4kHz,バンドパスフィルター1-1kHzにて,Power Labに取り込んだ。計測は,加圧2箇所と計測箇所3つ組み合わせの計6種類に対して,Peak to Peak(PP)値を求めた。そのPP値を加圧値で除し,PP比を求めた。10回ずつ実施し,平均値を代表値とした。10名の被験者に対して,数日の間隔を空けて,上記の計測を実施し,検者内級内相関係数(Intraclass Correlation Coefficient:ICC)のICC(1,10)を求めた。統計には,SPSSVer23.0(IBM社)を使用した。【結果】ICC(1,10)は,内側上顆への加圧では,5cm:0.75,10cm:0.85,15cm:0.92であり,滑車稜では,5cm:0.89,10cm:0.78,15cm:0.91であった。【結論】級内相関係数は,Landisの基準において,0.8以上でalmost perfect,0.61~0.80でsubstantialとされている。今回,すべての計測において,0.75以上と高値を示したが,特に計測部位が15cmで0.9以上と高値を示した。今回の級内相関係数からは,膝関節裂隙から遠位15cmの部位で計測することで,特に信頼性が高いことが分かったが,加圧部位に関しての差は見られなかった。今後は,加圧部位に関するさらなる検討を行う。

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