理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-KS-37-6
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TENSの周波数の違いが非刺激部位での伸張痛ならびに運動中の生理学的状態に及ぼす影響に関する検討
志田 航平吉田 英樹嶋田 有紗天坂 興中村 洋平佐藤 輝前田 愛松本 健太向中野 直哉前田 貴哉
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キーワード: TENS, 周波数, 運動
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抄録

【はじめに,目的】TENSは鎮痛を目的とした非侵襲的治療法であるが,症例によっては術創や体内金属などにより鎮痛を図りたい部位への実施が困難な場合がある。TENSによる鎮痛には門制御や広汎性侵害抑制調節(DNIC),内因性オピオイド(EO)などが関与するが,DNICやEOはTENSを実施していない非刺激部位での鎮痛を引き起こす可能性がある。また,TENSでは周波数の違いに伴う鎮痛効果への影響も指摘されているが,非刺激部位での筋の伸張運動中に生じる痛み(伸張痛)や運動中の交感神経や脳活の動といった生理学的状態に及ぼす影響については検討されていない。以上から本研究の目的は,TENSの周波数の違いが非刺激部位での伸張痛ならびに運動中の生理学的状態に及ぼす影響について検討することとした。【方法】健常者16名に対して,両股・膝90度屈曲位とした背臥位で一側の膝最大自動伸展運動(膝伸展)を実施する際に,対側の大腿後面への低周波数(3Hz)でのTENSを実施する条件(low-TENS),高周波数(100Hz)でのTENSを実施する条件(high-TENS),電極は貼付するがTENSを実施しない条件(sham-TENS)の3条件を無作為順序で1日以上の間隔を空けて実施した。low-およびhigh-TENSは,電極(5cm×5cmの粘着パッド)を大腿後面の内側と外側の中央部付近に貼付した上で,パルス幅250μsecの単相性矩形波を疼痛閾値以下の最大パルス振幅で30分実施した。膝伸展は各条件のTENS開始直前(基準),TENS開始15分後,30分後,45分後(TENS終了15分後)に実施し,各時点での膝伸展時の伸張痛の程度(NRS)に加えて,生理学的状態の指標として心拍変動周波数成分(交感神経活動を反映するの低周波数成分と高周波数成分の比:LF/HF)と前頭前野の脳血流量(酸素化ヘモグロビン量:HbO2)を測定した。その上で,各測定値の基準からの経時的変化を多重比較検定にて分析した。【結果】NRSについては,sham-TENSでは経過を通じ明らかな変化を認めなかったが,low-およびhigh-TENSではTENS開始45分後を含む経過を通じた同程度の低下を認めた。LF/HFについては,high-およびsham-TENSではTENS開始45分後を含む経過を通じた増加を認めたが,low-TENSではTENS開始45分後を含む経過を通じた減少を認めた。HbO2については,high-およびsham-TENSでは経過を通じて明らかな変化を認めなかったが,low-TENSではTENS開始45分後を含む経過を通じた増加を認めた。【結論】NRSの結果は,TENSが周波数の高低に関わらず非刺激部位の伸張痛を同程度軽減できることを示している。TENS実施中での伸張痛の軽減にはDNICとEO,TENS終了後での伸張痛の軽減にはEOの関与が推察される。加えて,LF/HFとHbO2の結果は,high-TENSと比較してlow-TENSの方が運動中のリラックス効果が高く(交感神経活動の抑制),課題への集中力をより高められる(前頭前野の活動向上)可能性を示唆している。TENSと運動療法の併用の観点から今後の更なる検討が必要である。

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