理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-KS-40-3
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高齢者における歩行能力と下肢運動連動性との関連性
小栢 進也淵岡 聡
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キーワード: 運動連動性, 歩行, 高齢者
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抄録

【はじめに,目的】ヒトの多関節運動では関節やセグメント間で運動を連動させて,効率のよい動作を行っている。加齢に伴って協調性が低下すると,セグメント間での運動の連動性も低下すると考えられている。しかし,連動性低下と歩行能力の関連性は明らかではない。運動の連動性を調べた過去の研究では,Continuous relative phase(CRP)を用い,2つセグメント間での運動の位相差が論じられている。そこで,本研究では歩行解析にCRPを用い,高齢者におけるセグメント間での運動連動性と歩行速度の関連性を検討した。【方法】対象は60歳以上で日常生活が自立した地域在住女性高齢者91名(年齢73.1±6.0歳)とした。体表に反射マーカーを張り付けた後,三次元動作解析装置を用いて快適速度での歩行を測定した。次に1歩行周期の矢状面角度データを用い,足部・下腿・大腿におけるCRPの値を求めた。CRPは横軸に角度,縦軸に角速度をプロットしたベクトル座標系から周期運動の位相を調べるもので,CRP差が0°は2セグメントが同位相,180°は逆位相で動いていることを表す。CRPの変動が大きいと連動性低下を表すため,CRPの標準偏差(DP:Deviation Phase)を用いてセグメント間の運動連動性を評価した。DPは値が高いほど連動性低下を意味する。まず,セグメント角度・角速度が-1から1の範囲で表せるよう,最大値と最小値を用いて標準化した角度,角速度を求めた。次に分母を角度,分子を角速度としたアークタンジェントからCRPを求め,近位と遠位のセグメントCRP差を算出した。最後に,足部-下腿,下腿-大腿におけるDPを求めた。各セグメント間のDPはpearsonの相関係数を用いて歩行速度,ステップ長,ステップ時間,年齢,身長,体重との関連性を検討した。また,重回帰分析のステップワイズ法を用いて歩行速度に関連する因子を検討した。【結果】DPは歩行速度(足部-下腿r=-0.41,下腿-大腿r=0.46),ステップ時間(足部-下腿r=0.54,下腿-大腿r=-0.37)と強い関連性を認めた。一方,ステップ長,年齢,身長,体重とは関連性が低かった。重回帰分析の結果より,歩行速度を説明する独立変数として足部-下腿DP(β=-0.26),下腿-大腿DP(β=0.35),年齢(β=-0.26)が検出された。自由度調整済み決定係数は0.35であった。【結論】歩行速度は足部-下腿DPと負の相関,下腿-大腿DPと正の相関を示した。DPは値が高いほど連動性低下を示すため,歩行速度が低下した高齢者は足部-下腿の連動性が低く,下腿-大腿の連動性は逆に高いことがわかった。特にこの傾向はステップ時間で強く認められ,ステップ時間が短いほど連動性は足部-下腿で低く,下腿-大腿で高い。若年者では歩行速度低下により足部-下腿,下腿-大腿の連動性は共に低下すると報告されており,高齢者を対象とした本研究の結果と異なる。高齢者の歩行速度低下の特徴として,大腿-下腿の連動性が増加する点にあることが示された。

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© 2016 日本理学療法士協会
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