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Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-RS-04-2

記事言語:

http://doi.org/10.14900/cjpt.2015.0757

口述演題
主催: 日本理学療法士協会
  • 抄録

【はじめに】呼気気流制限に由来する動的肺過膨張はCOPD呼吸困難感の主因と認識されているため,それの改善を目的とした気管支拡張療法がCOPD呼吸困難感治療のファーストラインに位置づけられている。しかし,感覚受容器からの求心性入力と中枢からの運動出力とに乖離(neuromechanical uncoupling)が存在する場合に呼吸困難感が生じるという考え方が多くの文献により支持されている。従って,感覚刺激による求心性入力の増強もまた呼吸困難感治療において重要であると考えられるが,それを試みたヒトを対象とする基礎及び臨床試験は未だ存在しない。そこで,筆者らは呼吸に関連した末梢入力を増加させるために,薄荷成分であり,TRPM8アゴニストであるL-menthol嗅覚刺激を使用した手法を用いて,運動時及び吸気抵抗負荷時の呼吸困難感に対する効果を検討した。【方法】呼吸循環器疾患を有しない健常者25名を対象にして,呼吸困難感へのL-menthol嗅覚刺激の効果を,プラセボを用いた無作為化クロスオーバー試験にて評価した。嗅覚刺激のためのパッチは単成分のものを使用した。呼吸困難感は0~35cmH2O/L/sの吸気抵抗負荷及び自転車エルゴメーターによる10分間の80%AT(嫌気性代謝閾値)相当の負荷時に修正ボルグスコアにて測定した。スティーブンスの法則に基づき,吸気抵抗を呼吸刺激とした場合,吸気抵抗の対数値に対する修正ボルグスコアの対数値との間に一次回帰直線の関係を認めることが知られているため,吸気抵抗値に対応する修正ボルグスコアをそれぞれlog変換し,それらをプロットして出来た直線から呼吸困難log-log slopeを求めることで呼吸困難感受性を評価した。更に,X軸との切片からLog呼吸困難閾値を評価した。有意水準はp<0.05とした。【結果】25名全例において,副作用を有するものはいなかった。10分間のプラセボ及びL-menthol嗅覚刺激前後の肺機能検査において,統計学的有意差を認めなかった。L-menthol嗅覚刺激条件下の運動時の呼吸困難感はプラセボに比べて有意に低値を示した。更に,吸気抵抗負荷による呼吸困難log-log slopeはプラセボに比べL-menthol群において統計学的有意に低値を示した。しかし,Log呼吸困難閾値は両群間に統計学的有意差を認めなかった。【結論】本研究により,L-menthol嗅覚刺激が様々な呼吸負荷時の呼吸困難感を抑制することが明らかになった。呼吸困難感強度は末梢受容器からの感覚入力と中枢における増幅作用との合成によって産生される。今回,Log呼吸困難閾値は両群間に統計学的有意差を認めず,l-menthol群において呼吸困難log-log slope及び運動時の呼吸困難がそれぞれ低値を示した。これらの結果より,L-mentholによる呼吸困難の緩和作用部位において末梢より中枢(supramedullary pathway)がより深く関与していることが示唆された。

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