理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-NV-20-1
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前大脳動脈領域に限局する脳梗塞により左片麻痺を呈した患者に対し足関節に着目した動作練習を行い歩行自立となった一症例
増岡 康介喜多 一馬上原 貴廣
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キーワード: 脳卒中, 歩行, 足関節
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抄録

【はじめに】前大脳動脈(以下,ACA)領域の脳梗塞は発症当初は下肢に強い麻痺が出現するが,機能予後や退院時の動作レベルは良好であるとされている。今回,ACA領域に限局する脳梗塞により左片麻痺を呈した症例を経験した。本症例も過去の報告のように退院時には,裸足歩行自立となったが,理学療法経過の中で足関節背屈筋の随意性がないことにより,裸足歩行の自立が困難であった。そこで,治療を再検討した結果,足関節背屈筋の随意性に変化はないままであったが,裸足歩行において足関節背屈は正常に近い関節運動の再現が可能となり独歩自立となったため報告する。【方法】本症例は40歳代の男性で,平成x年7月にACA領域の脳梗塞左片麻痺を発症し,MRIの拡散強調画像にて右の前大脳動脈終末領域に高信号を認めた。他院にて1ヶ月間理学療法および作業療法を受け当院に転院の運びとなった。当院での初期評価として,SIASの麻痺側運動機能の股屈曲テスト2点,膝伸展テスト2点,足パット・テストは0点であった。この症例に対し初期介入時は随意性を向上させる理学療法を中心に行い初期介入から1ヶ月後には,SIASの股屈曲テスト,膝伸展テストは2点から3点に向上し歩行はオルトップAFO使用し自立レベルであった。しかし,足パット・テストは0点のままで,裸足歩行遊脚中期の足関節背屈角度は-34°であり,裸足歩行ではクリアランスが悪く,転倒リスクが高い状態であった。そこで,足関節背屈を介助したステップ動作の反復や随意運動介助型電気刺激装置を用い,歩行の立脚後期の踵離地時に足関節背屈筋に電気刺激が入力されるように設定した状態で正常に近い歩容での歩行練習を実施した。【結果】足関節背屈に着目した理学療法を介入1か月後から2週間行った。その結果,SIASの股屈曲テスト,膝伸展テストは4点,足パット・テストは0点であった。歩行時遊脚中期時の足関節角度は背屈0.7°となり,裸足歩行は自立となった。【結論】今回,ACA領域の梗塞により左片麻痺を呈した患者において,足関節背屈に着目したステップ動作や歩行練習を反復して行い,足関節背屈筋の随意性がないにも関わらず,裸足歩行において足関節背屈の関節運動を再現することが可能であった。歩行は,屈筋と伸筋がタイミングよく興奮と抑制を繰り返す事であり,脊髄にはそのような基本的な時間的パターンを屈筋と伸筋に送り出す神経回路網が存在するとされている。このような歩行のリズムやパターンを生成する脊髄システムを賦活させるためにはリズミカルなステップ動作や歩行動作を反復する事が重要であるとされている。今回,足関節背屈筋の随意性がないにも関わらず,裸足歩行の足関節背屈の関節運動が再現できたのは,脊髄システムを賦活させることができたためであると考えられる。

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