理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-NV-20-2
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歩行補助具T-Support装用による脳卒中片麻痺患者の歩行動作の運動力学的分析
中谷 知生田口 潤智笹岡 保典堤 万佐子藤本 康浩
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キーワード: 脳卒中, 歩行, 補助具
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抄録

【はじめに,目的】我々は,脳卒中片麻痺患者が装用することで歩行能力を向上させる補助具T-Supportを開発し,その効果を検証・報告してきた。T-Supportは,体幹と下肢装具を弾性バンドで連結することで,下肢機能を補助する効果を有する。従来の検証は,装用時の歩行速度の変化を中心に行ってきたため,T-Supportが歩行時の生体に与える力学的特性は明らかになっていない。そのため,臨床場面でどのような動作の修正を目的として使用するかは経験則に基づいて行ってきた。今回,三次元動作解析装置と床反力計を用い,T-Support使用時の歩行因子の詳細な変化を検証したので報告する。【方法】対象は60歳代の男性で,脳梗塞発症から12年が経過していた。Brunnstrom Recovery StageはIIIで,歩行動作はT字杖とプラスチック製短下肢装具を用い自力で可能であった。計測はT-Support装用前,装用時,装用後の3条件とし,被験者は10mの歩行路を快適速度にて歩行した。身体動作計測にはVICON MX(VICON社製),床反力計(AMTI社製),赤外線カメラ(周波数100Hz)を用いた。赤外線反射マーカーは臨床歩行分析研究会が推奨する方法と勝平らの先行研究を参考に,被験者の身体各部に貼付しマーカーの座標データと床反力の鉛直方向成分を基に歩行の時間距離因子を算出した。関節角度および関節モーメントの算出にはVisual3D ver.4を用いた。【結果】装用前/装用時/装用後を比較すると,歩行速度(m/秒)は0.48/0.61/0.62,ステップ長(m)は麻痺側下肢で0.46/0.48/0.54,非麻痺側下肢で0.34/0.50/0.44であった。下肢関節角度(°)は麻痺側立脚後期の股関節最大伸展角度が18.1/24.8/22.5,足関節最大背屈角度は6.5/8.1/10.1,関節モーメント(Nm/kg)は麻痺側立脚後期の股関節屈曲モーメントが0.41/0.58/0.70,足関節の底屈モーメントが0.34/066/0.55であった。【結論】T-Support装用により,非麻痺側ステップ長および歩行速度が著明に向上した。非麻痺側ステップ長増大により相対的に麻痺側立脚後期の股関節伸展角度および足関節背屈角度が増し,伸長された弾性バンドと軟部組織の収縮により股関節屈曲モーメントおよび足関節底屈モーメントが増大したものと思われた。これらの変化は装用後にも継続しており,T-Supportによる歩行動作への影響に持ち越し効果があることが示唆された。本研究を通し,T-Support装用による歩行能力の変化は,麻痺側下肢の適切な関節運動を促すことによるものであることが明らかとなり,臨床場面での使用における重要な知見を得ることとなった。

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© 2016 日本理学療法士協会
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