理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-TK-04-5
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卓球をきっかけに社会参加活動に繋がった脳卒中片麻痺症例
生活期リハビリテーションにおけるPTの役割
高階 欣晴大井 清文
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キーワード: 卓球, 社会参加, 生活範囲
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抄録

【はじめに,目的】平成27年度の介護報酬改定により,主に生活期のリハビリテーション(以下,リハと略す)における社会参加に向けた関わりが重視されている。今回我々は,脳梗塞により左片麻痺を呈した症例の回復期リハと生活期の訪問リハに関わり,自宅で閉じこもり気味の生活が,病前行っていた卓球が機転となり,生活範囲の拡大及び社会参加活動の増加に繋がったので報告する。【方法】症例は50歳代男性,診断は右内包の脳梗塞,障害は左痙性片麻痺,構音障害および注意障害。学歴は,大卒で大学まで卓球の経験あり。仕事は情報管理であったが,約10年前に突発性難聴やクモ膜のう胞の発症を契機に退職。退職後は自室でインターネットなどをして,閉じこもり気味であった。発症17日後の当センター入院時の初期評価は,Brunnstrom stageが上肢III,手指II,下肢IIIで左半身の重度感覚障害あり,Functional Independent Measure(以下,FIM)は運動項目48点,認知項目25点で食事以外は介助を要した。回復期リハ病棟で約4ヶ月間介入し,退院時のBrunnstrom stageはすべてIIIであったが,FIMの運動項目が84点,認知項目は35点となり,階段と入浴以外のADLが完全自立となり,歩行も院内が短下肢装具とT-caneを使用し自立となった。介護保険は要介護1となり,入院中にケア会議や家屋改修を実施し,退院後は当センターの訪問リハと別事業所の通所リハを併用することとなった。【結果】退院後早期に自宅でのADLは自立したが,屋外歩行練習を拒否し,生活範囲は病前同様に自室中心となり,Life-Space Assessment(以下,LSA)も6点であった。6ヶ月後に主治医およびPTの助言を機に屋外歩行練習を開始し,加えてご家族とも実施するようになりLSAも16点に向上したが,社会との関わりが薄かった。14ヶ月後に当センター職員と退院患者で構成する卓球サークルに勧誘し,担当者及びご家族と参加。その後月2~3回の頻度で継続し,16ヶ月後に障害者卓球大会に出場し入賞した。これを契機に自宅から600mのスーパーに買い物に行く様になり,LSAも23点に向上した。【結論】本例は退院後の生活背景,社会背景の問題や歩行能力への不安等が混在し,気持ちが社会参加へと向き辛かったケースである。その中で,生活安定のための支援を継続しつつ歩行機会が増えてきた中で,社会参加を勧めるために本人の関心があった卓球の提案をした。その結果,卓球を行う中でより応用的な動作が出現し,さらに大会で入賞したことで自己効力感の向上に繋がり,買い物に行く等の更なる社会参加活動にも波及したと考える。今回生活期におけるスポーツが,PTが関わることによって,動作面のみならず精神面さらには日常生活行為の向上に繋がることを強調したい。

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© 2016 日本理学療法士協会
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