理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-01-2
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口述演題
人工膝関節全置換術後6ヶ月における身体機能とQOLの関係
―日本版膝関節症機能評価尺度(JKOM)を用いた評価―
星野 太一土屋 謙仕岡元 翔吾皆川 幸光木村 典子畑山 和久寺内 正紀
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抄録

【はじめに,目的】

Quality of life(以下,QOL)は患者立脚型評価であり文化による影響を強く受けるため,本邦では日本版膝関節症機能評価尺度(Japan Knee Osteoarthritis Measure:以下,JKOM)が開発されている。近年,JKOMを使用して人工膝関節全置換術(Total knee Arthroplasty:以下,TKA)術後のQOL調査が実施されており,Jonesら(2003)は,TKA術後6ヶ月でQOLの改善が見られると報告しているが,本邦のTKA術後6ヶ月の患者におけるJKOMと関連する因子についての調査はまだ少ない。そのため,我々はTKA術後6ヶ月時点のJKOMと身体機能の関係性を検討し,術後のQOLに影響を及ぼす臨床評価を明らかにすることを目的に調査を実施した。

【方法】

対象は,平成27年12月~平成28年2月の間にTKAを施行し,術後6ヶ月検診を受診しJKOMによるQOL評価が可能であった患者23名(男性10名,女性13名,平均年齢74±7歳)とした。検査項目は,患者背景因子として,年齢,Body Mass Index,既往歴,在院日数を調査した。身体機能評価は,術側及び非術側の膝関節屈曲伸展角度,膝関節屈曲伸展筋力,握力,片脚立位時間,安静立位時荷重量,Numerical Rating Scale(以下,NRS)を調査した。歩行・バランス能力の評価は,Timed Up and Go(以下,TUG),10m Maximum walking speed(以下,10m MWS),Functional Reach Test,片脚立位時間を調査した。QOL評価は,JKOMを使用した。統計解析は,身体機能の各項目とJKOMの総点・各下位尺度の得点をそれぞれSpearmanの順位相関分析にて相関を求めた。統計ソフトは,SPSS statistics 21を使用し,有意水準はすべて5%未満とした。

【結果】

JKOMの総点は術後6ヶ月におけるTUG(r=0.57,P<0.05),10m MWS(r=0.65,P<0.01)と有意な相関を認めた。JKOMの下位尺度のうち「膝の痛みやこわばり」の得点は,階段昇降時NRSと有意な相関を示した(r=0.57,P<0.05)。「日常生活の状態」の得点は,TUG(r=0.63,P<0.01),10m MWS(r=0.64,P<0.01),術側片脚立位(r=-0.65,P<0.01)と有意な相関を認めた。

【結論】

TKA術後のQOLには歩行能力・術側片脚立位時間及び階段昇降時の疼痛が関係していた。島田ら(2006)は,歩行能力向上により主観的な健康感は向上すると報告しており,本研究も同様の結果であった。また,西川ら(2009)は,歩行速度は片脚立位時間と関係していると報告している。今回示された術側片脚立位時間とQOLの相関は,術側片脚立位時間が歩行能力に影響するために見られたと考え,歩行能力向上によるQOLの向上を目指すには術側片脚立位時間向上が重要であると考えた。加えて,QOLの下位尺度である「膝の痛みやこわばり」には,階段昇降時の疼痛が影響していた。痛みが残存すると満足度は低下する(Baker PN, et al., 2007)と言われ,TKA術後の患者満足度を向上させるためには,階段昇降時の痛みの評価と介入も重要であると考えられた。

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© 2017 日本理学療法士協会
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