理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-05-1
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口述演題
メンタルローテーション課題と2ステップテストの関連性
市川 貴章中口 拓真須藤 俊祐櫻井 靖之
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抄録

【はじめに,目的】

日本整形外科学会はロコモティブシンドローム(以下,ロコモ)という概念を提唱しており,運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態と定義づけている。ロコモ評価の一つに2ステップテストがあり,ロコモ度の決定因子となっている。一方,近年では実際に関節運動を行わないメンタルローテーション(以下,MR)課題を行う事で,片脚立位バランス能力が向上すると報告されている(Kawasaki, et al., 2013)。その為,MR課題がロコモ度決定因子であるバランス検査の2ステップテストと関連している可能性がある。本研究は,MR課題と2ステップテストの関連性を明らかにする事を目的とした。

【方法】

対象者は花と森の東京病院が開催した介護予防教室参加者のうち,研究同意の得られた者とし,除外基準は疼痛により日常生活が制限されている者,認知症,神経学的疾患を有する者とした。

MR課題はPCソフトEXPLAB ver1.3にて回転提示(0度,R90度,180度,L 90度)した足部の写真(計16枚)が右か左かを判断させ,指定したボタンを押すことで回答させた。MR課題では平均反応時間と正解数を採用した。2ステップテストは,最大2ステップ長を2回計測し,その最大値(cm)を身長で除したものを2ステップ値として採用した。下肢筋力測定は膝伸展筋力を,ハンドヘルドダイナモメーターのベルト固定法で左右2回ずつ計測した最大値(N)を下腿長の積と体重で除したものを採用した(Nm/kg)。

統計解析は,多重共線性を確認した後,従属変数を2ステップ値,独立変数を年齢,性別,BMI,MR平均反応時間,正解数,膝伸展筋力としたAIC基準変数増減法によるステップワイズ重回帰分析を実施した。統計解析にはR2.8.1を使用し統計学的有意水準は5%とした。

【結果】

本研究には同意の得られた28名が参加された。各変数の平均は年齢67±9.7歳,男性8名,女性20名,BMI22.7±4.8,MR平均反応時間1.8±0.8秒,正解数11.6±2.6個,膝伸展筋力1.6±0.6Nm/kgであった。各変数において0.9を超える相関を認めなかった。重回帰分析では,膝伸展筋力,MR平均反応時間,年齢が抽出され,決定係数はR2=0.64であった(P<0.01)。Variance Inflation Factorで5以上の変数はなかった。

【結論】

2ステップ値に影響する因子として,膝伸展筋力,MR平均反応時間,年齢が独立して抽出された。また決定係数より,膝伸展筋力,MR平均反応時間,年齢の3つの因子が2ステップテストの約64%を規定しており,MR課題における平均反応時間は部分的に運動機能と関連していることが分かった。ロコモ予防や改善を目的にした運動を行う場合は,筋力増強運動等の身体運動のみならずMR課題のようなイメージ練習を取り入れた方がより効果的である可能性が示唆された。

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© 2017 日本理学療法士協会
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