理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-KS-10-5
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分娩方法により生じる骨盤形態の変化因子の検討
増田 一太
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抄録

【はじめに,目的】

女性の骨盤帯に生じる疼痛の発生は,妊娠中の45%,分娩後の25%に生じるとされる。この原因は妊娠初期から分娩後数日まで分泌するとされるレラキシンにより靭帯が弛緩するため,分娩後以降にも恥骨結合や仙腸関節部のアライメント異常が生じる可能性がある。このような骨盤輪不安定症や仙腸関節障害に伴う疼痛において,妊娠や分娩は発症リスクとなる事が報告されている。しかし,分娩方法により骨盤への負荷は異なるにもかかわらず,各々の骨盤形態への影響を検討した報告はない。

そこで今回,骨盤外計測を用い経産婦の分娩方法の違いによる骨盤の開きやねじれの要因を検討したので報告する。

【方法】

対象は19歳~79歳までの女性の内,研究への同意が得られた52名とした。内訳は異常分娩や緊急帝王切開を除外した経腟分娩例(以下VD群)33名(54.7±12.6歳),帝王切開例(CS群)8名(51.2±14.1歳),非経産婦例(MP群)11名(28.9±13.1歳)である。方法は骨盤外計測,年齢・身体計測および無記名他記式面接調査法による分娩方法・数や出生児などに関する調査を行った。骨盤の評価は骨盤計測器(Breisky型)を用い,日本産科婦人科学会が制定する骨盤外計測法により計測を試みた。計測部位は左右の上前腸骨棘(以下ASIS)間距離(前棘間径),左右の上後腸骨棘(以下PSIS)間距離(後棘間径),左ASISと右PSISとの距離(第1外斜径),左右逆転した(第2外斜径)を計測した。骨盤の開き度は前棘間径を後棘間径で除した値とし,骨盤のねじれ度は第1外斜径と2外斜径の差の絶対値とした。得られた両値は,尺骨長にて除し正規化した。測定は,一人の女性検者により行い,測定姿位は両脚を正中線に並列して伸ばし両膝を密着させて起立させた状態で行った。

統計学的処理は,一元配置分散分析を行い,事後検定としてTukey-Kramer法にて検定を行った。なお有意水準は5%未満とした。

【結果】

骨盤の開き度はVD群とMP群,CS群とMP群間に有意差(p<0.05)を認め,経産婦(VD群・MP群)において骨盤が開いている結果となった。骨盤のねじれ度はVD群とCS群,VD群とMP群に有意差(p<0.05)を認め経腟分娩が最も骨盤のねじれ度が高値であった。

【結論】

VD群における骨盤の開き度・ねじれ度ともに関連が強い因子は,最終分娩からの経過年数と調査時年齢にそれぞれ中等度の正の相関を認めた。女性は,より早期の分娩が骨盤の開き度・ねじれ度に影響を及ぼす可能性がある。

一方CS群は骨盤の開き度のみに有意差を認め,BMIと平均出生児重量と最大出生時重量に中等度の正の相関を認めた。出生体重が大きい場合,腹筋群への手術侵襲が大きく,腹筋群の機能低下がより強く生じた結果,骨盤の開き度が増大した可能性がある。

分娩の中でも経腟分娩が骨盤へのストレスが大きい分娩方法であることが分かった。

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