理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-YB-09-3
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単回のフレイル予防公開講座は地域在住高齢者にどのような効果をもたらすのか?
西郡 亨原 泰裕岩佐 健示半沢 嘉基中野 拓久住 治彦平林 弦大
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抄録

【はじめに,目的】

近年,介護予防においてフレイル予防が重要視されている。フレイルを予防するには,高齢者自身がフレイルに伴うリスクを認知し行動することが重要であり,そのための啓蒙や運動指導として介護予防教室や公開講座が開催されている。予防活動の効果検証に関して,介護予防教室など継続した複数回での活動の報告は多々見受けられるが,公開講座など単回の講座における効果検証の報告はされていない。そこで今回,単回のフレイル予防公開講座(公開講座)が地域在住高齢者にもたらす効果を検証することとした。

【方法】

A病院にて開催された公開講座で得られたアンケート結果から,その効果を検証した。対象は,公開講座に参加しアンケート調査に協力が得られた地域在住高齢者37名のうち,記入漏れ等で質問紙に不備のない21名(平均年齢74±6.4歳,男性4名・女性17名)とした。アンケートは独自に作成したアンケート調査票を用いた。この公開講座では,フレイル判定の後にフレイルに関する講義を行った。

公開講座の効果判定は,行動変容に着目し,①講座前後の運動意欲の変化 ②講座後の要介護化に対する不安感の変化 ③行動プラン立案の3つを検証した。「運動意欲」と「要介護化に対する不安感の変化」についてはいずれも4段階評価,「行動プラン」に関しては「介護を受けないために何をしようと思いましたか」との問いに対する自由記述で回答を求めた。

統計処理は,講座前後の運動意欲のアンケート結果をWilcoxonの符号付順位和検定にて比較し,p<0.05で有意差ありとした。要介護化への不安感の変化の結果は,単純集計し割合を求めた。行動プランに関する自由記述の回答は,テキストマイニングの手法にて頻出後抽出と階層的クラスター分析を行った。

【結果】

講座前後の運動意欲の変化に有意差が認められた(p=0.005)。講座後の要介護化への不安感の変化は,不安感減少者が87%,不安感増加者が13%であった。行動プランに関する自由記述では,最頻150語を抽出した結果「運動」「思う」「栄養」「食事」「続ける」が上位5番目までの最頻出語であった。階層クラスター分析では「続けること」「運動,食事,栄養」の2クラスターが得られた。

【結論】

単回の公開講座により,地域在住高齢者の運動意欲向上が得られた。また,階層クラスター分析より「継続性」「運動・栄養」が抽出され,要介護状態を予防する行動プラン立案が可能であった。今回の結果を示した要因としては,要介護化に対する不安感が減少していたことから,運動の実施や継続と適切な食事,栄養管理により要介護化へのリスクが減少するという効果を認識できたことが行動変容に影響を及ぼしたと考えられた。本研究の限界として,行動変容が生じた者が実際に行動に移したか否かは不明である。今後は,公開講座にて行動変容が生じた地域在住高齢者の運動と栄養管理の継続の可否を検証していく必要がある。

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© 2017 日本理学療法士協会
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