理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-RS-1-2
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口述発表
ICU入室患者における退院時抑うつ発生に関連する因子
-多施設ICU入室中の要因について-
伊藤 武久飯田 有輝渡辺 伸一水谷 元樹
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抄録

【背景および目的】

ICUを生存退室した患者において退院後に生じる身体、認知、精神の機能障害としてPICSが問題視されている。今回、ICU入室中において退院時の抑うつ発生に及ぼす影響について明らかにする事を目的とした。

 

【方法】

 ICU に入室し理学療法が施行された連続症例 764 名のうち、除外基準に相当する患者を除外し退院時に質問紙に対する回答が可能であった48例について後方視的に検討した。評価項目は入室時BMI、重症度、ICU在室期間、平均活動時間、退院時の指標として抑うつ発生の有無についてHADSを用いた。退室時指標として筋力にMRC score、握力、せん妄評価にICDSCを使用した。ICU平均活動時間はリハビリプロトコールの各項目を計測し、ICU在室日数で除した値とした。統計解析はロジスティック回帰分析(従属変数に退院時HADS(抑うつ)(8点以上/未満)、独立変数をBMI、MRC、握力、ICDSC、平均活動時間)を行った。また従属変数は同様に、抽出された因子との関係についてROC解析を行った。

 

【結果】

 退院時抑うつと負の相関を認めた指標は入室時BMI、退室時MRC及び握力であった。退院時抑うつ発生の予測因子として入室時BMIが抽出された(オッズ比0.794、95%CI:0.65-0.97)。退院時の抑うつ発生と入室時BMIのROC解析結果はAUC:0.698、カットオフ値22.7㎏/m2

であった。また、ICUにおける患者活動時間と抑うつ発生の影響をみたところ、有意な関連を認めなかったが抑うつ非発生群における活動時間は中央値で32.0分であった。

 

【考察および結論】

 今回、退院時抑うつ発生の予測因子として入室時BMIが抽出され、標準体重を下回る患者は抑うつ発生のリスク因子と考える。一方で直接的な影響を及ぼさなかったものの退院時の抑うつ非発生群におけるICUでの活動時間は中央値で1日30分であった。集中治療領域以外では抑うつに対する持続的な運動が推奨されており、今回の結果から早期運動の必要性と栄養管理の重要性が示唆された。

 

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は当院倫理委員会にて承認を得ている(受付番号290920-03)。本研究は後ろ向き研究で個人の匿名性は確保されており、データ使用の同意についてはオプトアウトを用いた。

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© 2019 日本理学療法士協会
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