理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-RS-2-7
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口述発表
誤嚥性肺炎患者における離床遅延因子
石橋 賢一水谷 元樹近藤 友和丸田 雄介坂口 硬太石坂 清志郎木全 叶
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抄録

【目的】誤嚥性肺炎(以下AP)を含む肺炎患者において、入院から3日以内に離床することが生命予後に大きく関与するとの報告があり、肺炎患者においても早期離床は推奨されている。しかし、AP患者は高齢や複数の疾患を罹患していることもあり、離床に難渋することもある。離床の遅延は生命予後だけでなく、入院期間延長や廃用による身体機能低下にも関連しており、今回当院でのAP患者の離床遅延の要因を検討することとした。

 

【方法】2016年4月~2017年3月にAP診断にて入院した全198例のうちデータ欠損例を除く157症例を対象とした。Mundyらの先行研究より、連続20分以上の車椅子乗車が可能な状態を離床開始の定義とし、3日以内に離床可能であった群をコントロール群(103例)、離床に4日以上かかった群を対象群(54例)に分類し、後方視的に調査した。調査項目は年齢、%IBW、要介護度、脳血管疾患・心疾患・APの既往歴の有無、入院時血清アルブミン値(以下Alb)肺炎重症度分類(以下A-DROP)、藤島式嚥下グレード、入院前FIM、絶食期間、入院前環境を調査した。統計は離床までの期間と各測定項目の相関関係をSpearmanの順位相関係数にて、また、コントロール群と対象群の差はχ²乗検定、Mann-WhitneyのU検定にて求め、有意水準を5%未満とした。

 

【結果】Alb(r=0.52、p<0.01)絶食期間(r=0.56、p<0.01)に相関関係及び有意差を認めた。また、A-DROP(r=0.36、p<0.05)AP既往(r=0.37、p<0.05)においても両群間において、相関関係は低いが有意差を認めた。その他の項目に関しては相関関係及び有意差を認めなかった。

 

【考察】APの既往がある症例においては、入院時より低Alb状態や重症度が高い可能性があり、これが絶食期間の延長に関与し、離床開始時期の遅延に繋がっていくと考える。今回の結果を踏まえてAP患者において早期より栄養状態を把握しつつ、栄養管理を踏まえた理学療法の早期介入が重要であると考えた。

 

【倫理的配慮,説明と同意】本研究は当院倫理委員会の承諾を得て行った。

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© 2019 日本理学療法士協会
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