理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-RS-4-22
会議情報

口述発表
COPD患者は、本当に自己管理能力があるのか?
-プロアクティブリサーチ活動により発見されたCOPD患者の特性より-
堀江 淳江越 正治朗中川 明仁松永 由理子宮原 一三高橋 浩一郎林 真一郎
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【背景・目的】

 COPD患者のリハビリテーションを実施していると、一見、理解力に何ら問題がなさそうであるにもかかわらず、自己管理がほとんどできない症例をよく経験する。本研究の目的は、認知機能、パーソナリティーの特性を記述的、事例的に分析することにより、呼吸リハビリテーションの継続方法について提言することとした。

 

【症例】

 プロアクティブリサーチ(積極的探索)活動で発見されたCOPD(PAR COPD)患者39名のうち、認知機能、健康心理学的特性、パーソナリティーに特徴のみられた7名とした。主要測定指標は、認知障害(MMSE)、軽度認知障害(MOCA-J)、前頭葉機能(FAB)、性格診断(エゴグラム)とし、副次測定指標は、呼吸機能、身体組成、四肢筋力、運動耐容能、健康関連QOL、社会背景とした。

 

【結果】

 GOLD病期はⅠ期2名、Ⅱ期5名、GOLDカテゴリー分類は全員がカテゴリーAであった。握力は31±7kg、大腿四頭筋力は27±8kg、ISWTの歩行距離は324±70m、SGRQ(合計)は14±6点であった。一方、MMSEは25.7±2.2点と高得点であったにもかかわらず、MOCA-Jは18.3±2.0点、FABは11.4±2.5点であった。エゴグラムは活発力(FC)が10.3±5.4点、協同力(AC)が10.0±2.9点であった。

 

【考察および結論】

 PAR COPD患者であることから、病期は早期で、症状は軽く、高い身体機能、身体能力を有していた。しかし、MMSEは高得点であるにもかかわらず、MOCA-J、FABは極端に低く、理解力、自己管理能力が十分に備わっているとは言い難い状況であった。また、エゴグラムは、FC、ACが特徴的に低く、無気力で、他者の指導を受け入れにくい性格傾向であることが示唆された。呼吸リハビリテーションの継続は患者の自己管理能力に応じて、自己管理経過観察タイプ、監視(外来継続)経過観察タイプかを判断しなければ、早期に発見できたCOPD患者であっても、その恩恵を維持していけないのではないかと推測する。

 

【倫理的配慮,説明と同意】

 本研究実施に際しては、対象者に文書を用いて、口頭にて研究の概要、方法、利益と不利益、データ公表などについて説明した後、自筆署名の文書にて同意を得た。更に、京都橘大学研倫理委員会において研究の倫理性に関する審査、承認を受けて実施した(承認番号17-07)。

著者関連情報
© 2019 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top