理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 29
会議情報

セッション
床反力解析からみえたKAFOの特性
~Forefoot rockerの課題~
梅田 匡純森下 元賀河村 顕治
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

序論

 脳卒中患者の歩行再建を目的とした長下肢装具(以下,KAFO)は,生活場面での実用性に向けた一つのプロセスであり,短下肢装具(以下,AFO)や裸足歩行へとつなぐための治療用装具として重要な位置を占めることに議論の余地はない.しかし,そこにはバイオメカニクスに基づいたKAFOの適応技術が必要となるが,AFOに比べKAFOの特性を検証する報告は少なく,関わる担当者の経験則に委ねられているのが現状である.

 足・膝継手2つの継手を有するKAFOは,その調整の組み合わせにより床反力から受ける関節モーメントに変化を与えることが可能であると推察できる.今回その変化について.床反力解析から検証を行ったので紹介する.

方法

 対象は,健常者13名(男性2名,女性11名,年齢32.5±6.5歳)を対象とした.右下肢にゲイトソリューション付KAFOを装着し,足継手と膝継手に制限と解除など以下の条件のもと,通常歩行の際の床反力と関節モーメントを測定した.測定条件は,膝継手の固定と解除のそれぞれにダブルクレンザック継手で足背屈制限を下腿前傾角(Shank Vertical Angle:SVA)0°で設定した場合としない場合の4条件に加えて装具なしの合計5条件とした.全条件においてGSの油圧目盛りは3に設定し足底屈制動を行った.

 フォースプレート(AMTI社),ToMoCo-Lite(東総),ToMoCo-FPm(東総),そしてビデオカメラ1台を使用し,通常速度になるとされる4歩目を矢状面からの二次元解析を行った.解析は,①垂直成分第1峰と谷の時間割合(立脚中期の時間),②垂直成分第1峰に対する第2峰の割合(第2峰の大きさ),③前後成分の前向きピーク値(足部の推進力),④立脚中期における股関節伸展外的モーメント(股関節の推進力)について比較検証を行った.統計処理は反復測定による一元配置分散分析を行い,有意水準は5%とした.

結果

 膝継手固定の条件では,足継手の条件に関わらず前後成分の前向きピーク値が有意に小さく,足部の推進力は小さい結果を示した.また膝継手を固定し足背屈制限を行わない条件においては,立脚中期の時間を早期に迎えることに加え,第2峰が小さく,股関節の推進力が大きく働く結果となり,他の条件に比べて特異的な変化を示した.

考察

 立脚相の股関節伸展に関して,足継手背屈を行わないKAFOの有効性は増田らによって述べられており,今回の結果からも立脚中期の時間や股関節伸展外的モーメントにおいてその傾向が認められたと考える.一方で、Forefoot rockerにみられた第2峰の低下と前後成分の前向きピーク値低下は,前遊脚期に必要となる床反力が乏しいことを示唆させ,長谷の報告するForefoot rockerの困難さを裏付けるものと考えられる.

結論

 KAFOの膝・足継手を調節した各条件間で床反力解析を行った.その結果,膝継手固定・足継手背屈解除の条件では,立脚前半の股関節伸展が促されるが,Forefoot rockerの床反力低下を認め,前遊脚期に対する課題がみえた.

倫理的配慮,説明と同意

 本研究は,吉備国際大学の倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号 15-41).被験者には研究の目的・内容・方法について十分な理解を得た上で文書にて同意を得たのち実施した.

著者関連情報
© 2019 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top