理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-B-11-8
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脳卒中片麻痺患者におけるHONDA歩行アシストの効果と足部・足関節機能の関係
佐藤 義尚山田 拓実島村 亮太廣澤 全紀髙城 翔太新井 康久
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抄録

【はじめに・目的】

近年,技術の進歩にともない,多くのロボットがリハビリテーション分野に導入されている.その装着型歩行支援ロボットの一つとして,本田技術研究所により開発されたHONDA歩行アシスト(Honda Walking Assist: 以下HWA)がある.HWAは,股関節屈伸運動を助ける歩行補助装置であり,軽量であり,装着が容易であるという特徴をもつ.先行研究では,股関節の関節運動の拡大や,歩行速度の増加や,歩行効率の改善が報告されている.しかし,歩行速度に関しては,股関節と足関節の両者が重要とされているが,HWAでは,股関節のアシストのみ行う.そのため,本研究は,HWAの効果と足部・足関節機能との関係性について検討することを目的とした.

【方法】

対象:歩行自立または修正自立している脳卒中片麻痺患者6名(50.5±8.8歳,Brs.:Ⅳ−Ⅵ)

 手順:10m歩行および,足関節機能項目として,足趾把持筋力,最大一歩幅,立位足圧中心移動距離を測定した.10m歩行は,アシストなし(N1),アシストあり(A1:4.0Nm),アシストなし(N2)の順に行った.A1の前にはアシストあり(4.0Nm)での歩行練習を3分間行った.

 解析:10m歩行時の歩行速度,歩調,股関節はさみ角(屈曲+対側伸展角度)に対し,反復測定分散分析を行った.また,10m歩行時の速度変化率,歩調変化率,股関節角度変化率(A1/N1,N2/N1)と,足関節機能項目(足趾把持筋力,随意的立位足圧中心移動距離,最大1歩幅)に対し,ピアソンの積率相関係数を算出した.統計解析にはIBM SPSS statics Ver.23を使用した.

【結果】

歩行速度N1:73.8±19.2m/min,A1:76.5±19.0m/min,N2:78.7±21.2m/minであり,N1-A1間に有意差を認めた.ハサミ角は,非麻痺側N1:43.2±7.5°,A1: 56.2±3.6°,N2:47.5±7.0°であり,N1-A1,N1-N2,A1-N2間に有意差を認めた.麻痺側N1:45.8±9.7°,A1:50.4±11.4°,N2:48.4±10.0°であり,有意差は認めなかった.

 足関節項目とHWA使用時・使用後の歩行速度変化率・歩調変化率・ハサミ角変化率との間のピアソンの積率相関係数は,足圧中心移動距離左右と速度変化率N2/N1:0.973,矩形面積と速度変化率N2/N1:0.932と有意な正の相関を認めた.

【考察】

HWA使用によって歩行速度および,非麻痺側のハサミ角の向上を認めた.このハサミ角は非麻痺側股関節屈曲と麻痺側股関節伸展角度の和であるため,片麻痺患者は,非麻痺側に比べ,麻痺側下肢安定性が低下しており,HWAによって,麻痺側下肢の支持性が向上することで,非麻痺側の股関節の可能性が拡大した可能性があると考えられた.また,足圧中心移動距離左右および,矩形面積と歩行速度変化率との間に正の相関を認めており,足関節機能が高い者ほど,HWAよって歩行速度が改善しやすい可能性があると考えられた.

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究はヘルシンキ宣言に則った研究であり,研究開始に当たって,首都大学東京研究安全倫理委員会の承認,東京都リハビリテーション病院倫理審査委員会の承認を得た.また,対象者には研究内容,目的について十分な説明をおこない,書面にて同意を得た後に実施した.

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© 2019 日本理学療法士協会
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