理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1-P-A-4-5
会議情報

ポスター演題
ACL再建術患者の術前の健側・患側の脛骨前方移動量、健患差、受傷からの期間の相関について
饗庭 甲人武田 寧堺 研二今屋 健
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに、目的】前十字靭帯損傷後の患側の脛骨前方移動量は受傷からの期間と正の相関があるという報告もあれば、全くないという報告もある。今回、膝前十字靭帯(以下ACL)再建患者の術前の健側の脛骨前方移動量(以下健側AD)、患側の脛骨前方移動量(以下患側AD)、健側ADと患側ADの差(以下AD健患差)、受傷からの期間の4つの相関関係について報告する。

【方法】対象は平成23~29年までに初回片側ACL断裂と診断され反対側に既往のない245名(男性104名:16.8±1.2歳、女性141名:16.0±1.6歳)。屈曲可動域:Heel to Hipは全体0.5±1.4cm、男性0.4±1.2cm、女性0.5±1.5cm、伸展可動域:Heel Height Differenceは全体0.6±1.1cm、男性0.6±1.1cm、女性0.6±1.1cmで、男女間で有意差はなかった。Index社のKNEELAX3を使用し軽度屈曲位にて132Nの牽引力で健側AD、患側AD、AD健患差を計測した。算出結果と受傷からの期間について社会情報サービス社のエクセル統計を利用し、ピアソンの積率相関係数を求め、母相関係数の無相関の検定を行った。

【結果】受傷からの期間は全体124±208日、男性132±206日、女性120±210であった。健側ADは全体8.0±2.0mm、男性8.1±2.1mm、女性7.9±1.8mmであった。患側ADは全体12.2±2.3mm、男性12.1±2.5mm、女性12.3±2.2mmであった。AD健患差は全体4.2±2.0mm、男性4.0±2.1mm、女性4.4±1.9mmであった。受傷からの期間、健側AD、患側AD、AD健患差にいて男女間で有意差はなかった。全体、男女別で健側ADと患側ADの間に中等度の正の相関(全体r:0.58、男性r:0.59、女性r:0.59)(p<0.001)、患側ADとAD健患差との間に中等度の正の相関(全体r:0.59、男性r:0.57、女性r:0.61)(p<0.001)、健側ADとAD健患差に弱い負の相関(全体r:-0.31、男性r:-0.32、女性r:-0.28)(p<0.001)が認められた。受傷からの期間とAD健患差に相関は認められなかった。

【結論(考察も含む)】ACL損傷により患側ADは健側ADより大きくなるため、健側ADと患側ADの間に中等度の正の相関を示した。患側ADが大きければAD健患差も大きくなるので、患側ADとAD健患差との間に中等度の正の相関を示した。健側ADとAD健患差の弱い負の相関は、健側ADが小さければAD健患差は大きくなる傾向にあることを示した。今後、前方不安定性を制動する他の関節内因子について調査したい。

【倫理的配慮,説明と同意】本研究は当院の倫理委員会の承認を得た。開示すべき利益相反はない。

著者関連情報
© 2019 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top