理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P6-15
会議情報

ポスター
ハンドヘルドダイナモメーターを用いた徒手筋力測定の信頼性と妥当性
北地 雄原島 宏明宮野 佐年
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】

 臨床における筋力測定法の一つに、ハンドヘルドダイナモメーター(HHD)の使用があり、高い信頼性や、起立能力、歩行能力との関係が報告されている。しかし、その多くが膝関節伸展運動である。本研究の目的は、膝関節伸展以外の関節運動におけるHHDを使用した筋力測定の信頼性と妥当性を検討することである。

【方法】

 対象は当院に入院した脳卒中者15名であった(年齢61.5歳、女性5名、発症から計測まで84.9日)。取り込み基準は歩行補助具および装具なく10m以上の自力歩行が可能なものであった。筋力を測定する関節運動は、歩行に重要な筋とされる股関節屈曲、伸展、足関節底屈とした。筋力測定は非麻痺側、麻痺側の順に3回行い、各試行間は30秒以上の休憩を設けた。測定肢位は、股関節屈曲がMMTと同方法でセンサは大腿遠位部、股関節伸展がMMTの変法(背臥位)でセンサは下腿遠位部、足関節底屈が股関節伸展と同肢位でセンサは中足骨頭部とした。統計解析は、HHDによる筋力測定の検者内信頼性を調べるためICCを算出した。同様に、基準関連妥当性を調べるため、快適歩行速度および最大歩行速度との相関係数を計算した。解析はSPSS ver 25.0を使用し、有意水準は5%とした。

【結果】

 対象者の麻痺側筋力(中央値/最大値/最小値)は股関節屈曲が87/158/26N、股関節伸展が100/184/63N、足関節底屈が270/430/42Nであった。麻痺側筋力は非麻痺側に比較し有意に弱かった(p < 0.05)。麻痺側の筋力測定の信頼性(ICC(1,1);95%CI下限~上限)は、股関節屈曲が0.96;0.87~0.99、股関節伸展が0.96;0.90~0.98、足関節底屈が0.94;0.87~0.98であり、非麻痺側は股関節屈曲が0.90;0.75~0.98、股関節伸展が0.87;0.72~0.95、足関節底屈が0.87;0.72~0.95であり、非麻痺側の方がICCは低かった。快適歩行速度と関連を認めた変数は麻痺側足関節底屈筋力(Nm/kg)であり(r=0.533, p<0.05)、最大歩行速度と関連を認めた変数は麻痺側股関節伸展筋力(N, Nm/kg)、麻痺側足関節底屈筋力(N, Nm/kg)であった(それぞれr=0.609, 0.714, 0.613, 0.582, p<0.05)。

【考察】

 HHDによる筋力測定は高い信頼性があり、膝伸展以外でも、固定ベルトを使用しなくても、HHDによる筋力測定に慣れれば高い再現性を得られることが示唆された。非麻痺側の方がICCは低かったが、非麻痺側が先という計測順の影響が考えられる。非麻痺側の筋力は歩行速度との関連を示さず、麻痺側足関節底屈筋力は快適および最大歩行速度ともに関連を認めた。しかし、被験者が15名と少数であり、更なる検証が必要と考えられる。

【結論】

 HHDによる筋力測定は高い信頼性があり、歩行能力との関連も認められる。被験者数の増加、他の動作能力との関連の検討も必要である。

【倫理的配慮,説明と同意】

対象者には研究の概要、参加が任意であること、参加しなくても一切の不利益がないこと、いつでも参加撤回できること、個人情報の取り扱いなどを口頭、および書面にて説明し、研究参加の同意を得た。

著者関連情報
© 2019 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top