理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-3
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頭頚部アライメントと自律神経および気分・感情との関係性
藤田 裕子
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抄録

【はじめに、目的】

頭頚部アライメント評価には、頭蓋脊椎角(craniovertebral angle:CV角)や、壁と後頭部の最突出部の距離を計測するocciput-to-wall distanc(OWD)がある。本研究では頭頚部アライメントと自律神経および気分感情との関係性を明らかにすることを目的とした。

【方法】

対象は健常者15例(男性8名、女性7名、平均年齢20.5±2.5歳)とした。測定項目は立位時の頸部アライメント評価(OWD・CV角)、自律神経指標、気分感情尺度のProfile of Mood States Second Edition(POMS)とした。OWDは外眼角と耳介上部を結ぶ線が床と平行となるよう頭頸部中間位とし踵を壁につけた状態で立位をとり、壁と後頭部の最突出部との距離をメジャーにて0.5 cm間隔で計測した。CV角は第7頸椎棘突起を通る水平線と第7頸椎棘突起から耳珠を通る線がなす角度を計測した。自律神経指標はタスクフォースモニター(日本光電社性、TFM-3040)を用いて、安静座位保持、立位保持における心電図のR-R間隔変動より低周波領域のパワー積分値(LF)および高周波領域のパワー積分値(HF)を算出し、HF成分を心臓迷走神経の指標、LF/HFを心臓交感神経の指標とした。さらに超低周波領域(VLF)の影響を排した補正値LFnuRRI、LFnuRRIを解析データとした。気分感情指標にはPOMSを用いて現在の気分・感情を計測した。本研究ではOWD・CV角とLF・LF/HF・POMS(AH・CB・DD・FI・TA・VA・F・TMD)との関係をピアソンの積率相関係数を用いて分析を実施した(p<0.05)。

【結果】

OWDはPOMS項目のうち、怒り-敵意(AH、r=-0.56)、混乱-当惑(CB、r=-0.67)、うつ-落ち込み(DD、r=-0.58)、疲労-無気力(FI、r=-0.54)、緊張-不安(TA、r=-0.60)、総合的気分状態(TMD、r=-0.7)と負の相関が見られたが、活気-活力(VA)と友好(F)とは相関関係が見られなかった。また、CV角は安静座位のHF(r=0.58)安静立位のHF(r=0.56)と正の相関関係を認めたが、LF/HFとは相関関係を認めなかった。

【考察】

OWDは数値が大きい程、CV角は角度が小さい程、頭頚部が前方偏位していると言える。本研究より、頭頚部前方偏位が大きくなるに従って、ネガティブな感情は強くなり、副交感神経が低下する傾向があることが示された。ストレスや精神面と自律神経との関係性は報告されているが、姿勢アライメントと感情・心理面との関係性についての報告は少なく、頭頚部アライメントなどの身体的側面からも心身機能の相互作用に関して検討していく必要がある。本研究は頭頚部アライメントのみの計測であるため、今後は脊柱アライメントや頭頸部周囲筋群の要因も含め、自律神経障害を呈している症例や、気分感情面についての詳細な評価についても検討する。

【結論】

頭頚部前方偏位と自律神経および気分感情は関係している可能性が示唆され、理学療法において姿勢評価・介入の重要性と心身機能の相互関係を考える一助になったと考える。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は当大学倫理委員会の承認を得て行った(承認番号:2017−0049)。また、ヘルシンキ宣言に則り、対象者に研究の趣旨を説明し、同意を得た。

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© 2019 日本理学療法士協会
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