理学療法学Supplement
Vol.47 Suppl. No.1 (第54回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-81
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ヤングセミナー
非特異性腰痛に対するヤンダアプローチでの治療戦略
森 健太郎
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抄録

 私がヤンダアプローチと出会ったのは,まだ理学療法士として働き始めて間もない頃である。Janda博士の功績は私が述べることは不可能であるがCraig Liebensonはこう述べている。筋骨格系のヘルスケアに対する彼の貢献は計り知れない。彼はいかに筋の強さや弱さを見抜くか,また安定性を維持するための身体の彎曲をいかに識別するかという事に関して,われわれの概念を覆したと。2002年にヤンダ博士はこの世を去ったが多くの書籍で彼の名前は見受けることができ,研究者のみならず世界の臨床家に今なお影響を与えている。以下にヤンダアプローチの主要な概念であるマッスルインバランスについて紹介する。

 Jandaによると,マッスルインバランスとはいくつかの筋が抑制され弱化(相動性システムの筋群)し,一方では他の筋が過剰活動にある状態(緊張性システムの筋群)をさす。ハムストリングスや僧帽筋上部などの過活動,もしくは殿筋群や腹筋群などの弱化傾向が代表的である。筋の過活動や弱化は無作為には生じず,むしろ典型的な「マッスルインバランス・パターン」として説明されている。例として,近位交差症候群は胸鎖乳突筋や後頭下筋,僧帽筋上部,肩甲挙筋,大胸筋における過活動もしくは短縮の促進,そして同時に深層頸部屈筋や下位肩甲骨安定化筋の抑制による弱化によって特徴づけられたマッスルインバランス・パターンである。

 これらのインバランスのパターンは局所的,徴候的部位に限定されたままではなく,全身の他の運動部位に連鎖反応を促してしまう。また現代社会での活動は姿勢筋機能に過剰な負荷がかかる事が多く,静的過負荷と蓄積された微細損傷に伴い,可動性は減少し,強制された姿勢での動きは継続的に行われている。こういった生体力学的要素もマッスルインバランスを助長し誤った運動パターンに陥りやすくさせる。したがって,良質な姿勢・動きのための運動プログラムの改善が必要となる。

 Jandaは関節,筋,神経システムは機能的に統合されており,こういったマッスルインバンスに対するアプローチは感覚システムと運動システムの統合が前提であると述べている。

 これを踏まえ,臨床においてこのマッスルインバランス・パターンの評価は,歩行分析,筋緊張の観察を含む姿勢分析,運動パターンテスト,筋の長さテストにて行われ,筋のインバランスや運動パターンがどのように変化したかを把握し,短縮,過緊張,過活動となっている筋と弱化,抑制されている筋を見極めることによる。

 具体的には過活動の筋にはストレッチングや弛緩を図り,弱化,抑制されている筋には促通を図ることとなる。短縮,過活動,過緊張筋を弛緩させる目的は2つある。1つは可動域を改善し短縮筋の柔軟性を増加させることである。2つ目は主動筋を抑制している筋を弛緩させ,拮抗筋の過活動による抑制の影響を受けずに主動筋が活動できるようになることである。拮抗筋の弛緩と主動筋の増強はある動作の一連の流れを作る筋の活動を促す。例えば股関節伸展や外転の正しい筋活動パターンを再確立する。そのパターンは神経学的にも確立され,小脳にプログラム化されるよう導かれるべきである。

 このようなリハビリプログラムでの望ましい治療結果は,協調性のある筋活動パターンが得られることである。神経学的にも機械的にも抑制が認められず,筋のインバランスが見られなくなり,正常な筋機能が復活することである。

 今回,被特異性腰痛患者を上記のようなヤンダアプローチの視点から紐解き,そのアプローチの内容を述べたい。

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