理学療法学Supplement
Vol.47 Suppl. No.1 (第54回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-83
会議情報

ヤングセミナー
臨床研究の実際
―臨床疑問から研究への発展―
川端 悠士
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

1.臨床疑問の見つけ方

 臨床研究の本質的な意義は,臨床の現場から生まれた純粋な疑問を解き明かしていくことにある。したがって臨床場面でクライアントに直接的に接する理学療法士各々に,臨床疑問を解決する役割が課せられている。

 臨床研究は臨床疑問から始まるところに大きな意味があり,研究過程が臨床疑問から始まらないと,研究のための研究に終始してしまう。「研究はしたいけど研究のネタが見つからない」といった声も聞かれるが,臨床的意義のある臨床疑問を見つけるためにはいくつかのコツがある。まず臨床実践における意識を変えることが重要である。理学療法の分野には,まだまだ経験則で構築されたパラダイムが多く存在する。したがって臨床を実践する上では,常に疑問を持ちながら当たり前を当たり前と思わない姿勢が重要である。また単一症例研究と多標本実験計画法を用いた研究は別物であると考えられがちだが,単一症例を通じて意義のある臨床疑問を発見できることは少なくない。理学療法士として真摯に一例一例に対峙していくことこそが,臨床的に意義のある臨床疑問を発見するためには最も重要である。

2.臨床疑問だけでは研究はできない

 せっかく臨床的に意義のある臨床疑問を見つけることができても,臨床疑問をそのまま研究へ結び付けることはできない。学会に参加すると,研究アイディアは非常に興味深いにもかかわらず,研究デザインや統計学的な解析方法が適切でない発表も見受けられる。臨床疑問を研究実践に結びつけるためには,臨床疑問を研究疑問へ構造化する作業が重要となる。臨床疑問を研究疑問へ構造化する際には,PECO/PICOといった形式で要約すると効率的である。また臨床疑問をPECO/PICOの形式で研究疑問へと構造化できたら,FIRM2NESSの法則を用いてさまざまな観点から研究疑問を吟味することも重要である。

3.臨床研究実践による教育的意義

 臨床研究実践の意義は,真理を追究しその分野における科学的根拠を明らかにするといった本来の学術研究の意義にとどまるものではない。臨床研究の実践は専門職としてのスキルを高めることにもつながり,若手理学療法士が専門職として成長する上でも,臨床研究実践の果たす意義は大きい。臨床研究を行う上では,情報収集力・コミュニケーション能力・文書作成力・問題解決力・客観的分析力・論理的思考力・プレゼンテーション力等,様々なスキルが必要となる。臨床研究の実践は専門職として必要なスキルの学習にも繋がるため,若手理学療法士にも積極的に臨床研究に取り組んでいただきたい。

 本セミナーでは筆者自身が過去に取り組んだ研究を紹介しながら,臨床疑問を発見する視点,臨床疑問を研究疑問に発展させる過程,実際に研究を進めていくコツについて紹介する。

著者関連情報
© 2020 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top