日本口蓋裂学会雑誌
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原著
二段階口蓋形成手術法におけるFurlow法による軟口蓋形成後の硬口蓋裂の推移
―硬口蓋閉鎖の適期に関する検討―
飯田 明彦高木 律男小野 和宏寺尾 恵美子小山 貴寛小林 孝憲五十嵐 友樹
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2010 年 35 巻 3 号 p. 195-206

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抄録
【目的】二段階法の軟口蓋形成においてPerko法(P群)に比し早期に鼻咽腔閉鎖機能が獲得されるFurlow法(F群)の特長を生かし早期に正常構音を獲得させるために,現在と同程度の手術侵襲・難易度のまま硬口蓋閉鎖の時期を早められるかを検討する。
【対象ならびに方法】1.軟口蓋形成をFurlow法で行った片側性唇顎口蓋裂患者47名の上顎歯槽模型から歯槽弓ならびに硬口蓋裂の大きさの推移を分析した。2.F群とP群の硬口蓋閉鎖の手術成績(最大硬口蓋裂幅,手術時間,術中出血,瘻孔発生率)について比較検討した。3.F群から無作為に抽出した4歳時と硬口蓋閉鎖直前の上顎歯槽模型について,熟練した術者に硬口蓋閉鎖の侵襲度,難易度を3段階で主観的に評価してもらい評価の一致率を検討した。
【結果】1.前方部硬口蓋裂幅径は軟口蓋形成から2歳まで有意に減少した。2.後方部硬口蓋裂幅径は3歳まで有意に減少し,その後大きな変化はなくなった。一方,後方部歯槽弓幅径は2歳から4歳まで有意に増加した。3.最大硬口蓋裂幅は平均4.06mmで,P群の6.02mmに比べると有意に狭かった。術中の出血量はP群に比し半減していた。手術時間,瘻孔発生率に差はなかった。4.硬口蓋閉鎖の侵襲度・難易度の評価は低侵襲,低難度とされたものが多く,4歳と硬口蓋閉鎖直前で高い一致率を示した。
【結論】F群においては現在と同程度の手術侵襲・難易度のまま硬口蓋閉鎖を4歳に早めることができるものと思われた。
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© 2010 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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