日本口蓋裂学会雑誌
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統計
明海大学病院における口唇裂・口蓋裂患者の過剰歯に関する臨床統計調査
品川 令藤本 舞長谷川 紘也土屋 隆子土肥 洋介ダシドンドグ オトゴントヤ豊田 亜希子真野 樹子須田 直人
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2018 年 43 巻 1 号 p. 20-25

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抄録

口唇裂・口蓋裂患者では,過剰歯が健常者より高頻度にみられる。しかしながら,その裂型や裂側・非裂側との関係,萌出方向には不明な点が多い。そこで明海大学病院を受診した患者を対象に調査を行った。
当院矯正歯科を受診した非症候群性口唇裂・口蓋裂103例(初診時年齢4〜29歳,男性48例,女性55例)の初診時およびその後の診査により得られたX線写真(パノラマX線写真,デンタルX線写真,オクルーザルX線写真,コーンビームCT画像),歯列模型,顔面・口腔内写真,問診票,診療録を用いた。歯の脱落あるいは抜去の既往が特定できず,過剰歯と晩期残存乳歯との判別が困難な症例は調査対象から除外した。内訳は,片側性唇裂4例,片側性唇顎裂21例,片側性唇顎口蓋裂40例,両側性唇顎裂4例,両側性唇顎口蓋裂9例,硬軟口蓋裂19例,軟口蓋裂6例であった。正常歯数を超えたもののみを過剰歯とし,以下の項目を調査した。1.過剰歯の頻度,2.裂型別の過剰歯の発現率,3.裂側と非裂側の上顎過剰歯の発現率,4.過剰歯の発現部位,5.上顎側切歯近傍の過剰歯と顎裂の位置関係,6.過剰歯の萌出方向。
1歯以上の過剰歯を有する症例は,103例中19例(18.4%:男性20.8%,女性16.4%)であった。裂型別では,片側性唇裂が75.0%と最も多く,次いで片側性唇顎裂(42.9%),片側性唇顎口蓋裂(12.5%),両側性唇顎口蓋裂(11.1%),硬軟口蓋裂(5.3%)の順であった。好発部位は上顎側切歯近傍で,過剰歯数全体の85.2%であった。片側性の裂型では,過剰歯の93.8%が裂側に集中した。萌出方向は順生が88.9%であった。
以上より,口唇裂・口蓋裂の過剰歯は裂隙と密接な関係にあり,健常者と異なった形成機構が考えられる。

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© 2018 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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