日本口蓋裂学会雑誌
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口唇,口蓋裂に対する=般人の認識に関する研究
II.一般人の属性別による認識の比較
夏目 長門服部 吉幸成田 幸憲金森 清大辻 清長縄 吉幸橋本 治河合 幹
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1984 年 9 巻 1 号 p. 56-64

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抄録

口唇,口蓋裂に対して,地域社会の人々によりよい形で理解を得させるための基礎資料として,名古屋市の小学生の保護者1712名を対象に質問紙法による調査を行い,解答が得られた1608名(回収率93.9%)のうち,記入に不備のあった18名を除いた1590名分のdataを本学電算機センターFacomM150Fシステムに入力し,crosstableを作製し,本症に対する一般の人々の認識の程度は,属性により差異が認められるかどうかを検討し,以下の如き結論を得た.
1.本症に対する認識は,性,年齢,居住区などによる差は少なく,むしろ就学年数(学歴),職種などとの関連が感じられた.
2.就学年数(学歴)の多い人程,本症をよく知り,予後を明るくみているにもかかわらず,患者に対する否定的見解,社会的不適応感を抱く傾向が見られた.このような比較的教養の高い人々に対する本症理解のための積極的な働きかけが必要だと考えられた.
3.就学年数(学歴)が少ない人では,予後に対して悲観的見解を有する傾向があるにもかかわらず,患者に対する否定的見解は少なく社会的適応も悪くないと考えているが,反面,本症の実態を充分理解していないと推測され,低年齢(小学,中学校)における本症を含めたこの種の疾患全般にわたる教育(啓蒙)の必要性を感じさせた.

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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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