臨床神経学
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シンポジウム5:難治性筋疾患の病態機序―CK発見から50年―治療の時代へ
シンポジウム5―4 難治性筋疾患の病態機序―CK発見から50年―治療の時代へ 臨床試験に向けた筋ジストロフィーの評価法の確立と患者登録システムの構築
川井 充
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2009 年 49 巻 11 号 p. 863-866

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抄録

1987年のデュシェンヌ型筋ジストロフィーの原因タンパクの発見から20年あまりがたち,ようやくエクソンスキッピング,ストップコドンの読み飛ばし,ユートロフィンの過剰発現など原因に近いところを標的とする治療法が実現しようとしている.日本でも治療法開発の最終段階として臨床試験がが計画されている.この領域では臨床試験の経験が乏しいため,適切な治療効果測定法が確立していない.筋ジストロフィーでは有効な治療法とみとめられるためには標的となるの生物学的マーカーの改善の証明は当然のことであるが,筋量の増加,筋力の増加,ADLの改善,QOLの改善が証明されて本当に有用な治療法であると結論できる.筋ジス臨床研究班では2002年からこれらの評価法の開発に取り組んできた.また現在開発中の筋ジストロフィーの治療は特定の遺伝子変異を対象とするいわゆるテイラーメイドの治療であるため,すべての個人について遺伝子変異の種類と場所を特定できる体制を用意しなければならない.2009年国立精神・神経センターに遺伝子解析センターを設置したところである.また臨床試験を開始するとき充分な数の被験者を短期間に組み入れるのが困難であることが予想される.そのためあらかじめ臨床情報と遺伝情報をふくむ筋ジストロフィー患者登録システムREMUDY(Registry of Muscular Dystrophy)を発足させた.研究者や製薬企業にはプロトコールの対象となる患者数を,患者には治療法開発の最新情報を伝えることができ,希少疾患の臨床試験基盤整備の原形となることが期待される.

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© 2009 日本神経学会
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