2009 年 49 巻 4 号 p. 179-185
39歳男性例を報告した.視覚異常を自覚し,1カ月後に全身痙攣発作が出現して当科に入院した.頭部MRIにて右前頭葉内側,中脳,視床,大脳皮質に異常信号が多発したが,痙攣発作のコントロールとともに右前頭葉内側を除いて異常所見はおおむね消失した.その後,失調性歩行,四肢しびれが顕著となり,大球性貧血,血清ビタミンB12値低下,抗胃壁細胞抗体陽性,抗内因子抗体陽性が確認された.MRIにて脊髄後索,延髄,小脳,視床間橋,前頭葉に異常信号の出現をみとめ,ビタミンB12欠乏性脳脊髄症と診断した.ビタミンB12の投与により症状は軽減し,新たなMRI異常所見は消失した.てんかんの原因検索の際には当疾患も念頭におく必要がある.