2011 年 51 巻 6 号 p. 430-432
頭蓋内から体循環へもどる静脈の還流障害により中枢神経組織に鉄が沈着し,リンパ球が鉄に反応することで脱髄病変が生じるというZamboniらの多発性硬化症(MS)血管障害説を検証した.日本人MS 17例および視神経脊髄炎(NMO)患者11例を対象に頸部エコーをもちいて内頸静脈の断面積および流速を測定した.断面積では両疾患に差異はみられなかったが,MS 1例,NMO 2例で血流障害をみとめた.今回の結果から,頸部エコー検査でみるかぎり,内頸静脈での静脈還流障害は,抗アクアポリン4抗体が病態に関与するNMOと比較してMSで顕著であるとはいえず,Zamboniらの仮説を支持する根拠はえられなかった.