臨床神経学
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症例報告
結核性髄膜炎との鑑別が問題になった軟髄膜原発悪性リンパ腫と考えられた1例
田口 宗太郎丹羽 淳一徳井 啓介西川 智子市川 由布子道勇 学
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ジャーナル オープンアクセス

2012 年 52 巻 6 号 p. 416-420

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抄録

症例は45歳男性である.一過性の右顔面神経麻痺発症1カ月半後に発熱,記銘力障害,発語量低下が出現し2週間持続.頭部MRIで脳梗塞の多発,MRAでは血管炎がうたがわれた.脳脊髄液は単核球優位の細胞数増多,著明な蛋白上昇,糖低下,アデノシンデアミナーゼ高値を呈し細胞診は陰性であった.全身CTとガリウムシンチに異常なく,臨床的に結核性髄膜炎がうたがわれステロイド併用抗結核療法を施行,症状は改善した.4カ月後,発熱にともない神経症状が再増悪.下顎リンパ節腫脹をみとめ,生検にて悪性リンパ腫の診断にいたった.本例は結核性髄膜炎と鑑別困難で軟髄膜原発と考えられた悪性リンパ腫であり,その診断には慎重な臨床経過観察と診断努力を要した.

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© 2012 日本神経学会
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