臨床神経学
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症例報告
短期記憶障害を呈し抗Ma2抗体,抗NMDAR抗体,抗GluRε2抗体陽性で,後に精巣腫瘍をみとめた傍腫瘍性辺縁系脳炎の1例
久保田 昭洋田島 孝士成川 真也山里 将瑞深浦 彦彰高橋 幸利田中 惠子清水 潤野村 恭一
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2012 年 52 巻 9 号 p. 666-671

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抄録

生来健康な36歳の男性である.数カ月で進行する短期記憶障害を主訴に来院し,他の神経学的所見は正常であった.頭部MRIにて両側海馬周辺の高信号域をみとめ,辺縁系脳炎と診断.ステロイドパルス療法,血漿吸着療法,大量免疫グロブリン療法を施行し,即時記憶障害は改善したものの近時記憶障害が残存した.各種の自己抗体を測定.髄液中の抗NMDAR抗体(NR1+NR2),抗GluRε2抗体,血清中の抗Ma2抗体の陽性をみとめた.発症11カ月後,エコーにて左精巣腫瘍が判明し摘出術を施行した.傍腫瘍性辺縁系脳炎でも短期記憶のみの障害で発症し,抗Ma2抗体と他の自己抗体を合併した症例は本邦では報告がなく,貴重な症例と考え報告した.

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© 2012 日本神経学会
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