臨床神経学
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3 脳梗塞急性期治療の最前線
脳梗塞急性期の病態と治療のターゲット
田中 耕太郎
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2013 年 53 巻 11 号 p. 1159-1162

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抄録

脳は虚血に対し大変脆弱であり,脳血流量低下のレベルに応じて種々の細胞機能障害が出現する.虚血開始後,虚血中心部から周辺部にかけて,虚血性脱分極,グルタミン酸やCa2+による興奮性細胞傷害,フリーラジカルなどによる酸化的傷害,二次的微小循環障害,炎症反応,アポトーシスという一連の反応が,カスケード的に進行する.また,虚血巣周辺部の外縁では,内在的保護機転も賦活化される.脳梗塞急性期には,虚血巣中心部の周囲にペナンブラと称される領域が存在し,この領域の救済が脳梗塞急性期治療の重要なターゲットの一つとなっている.脳梗塞急性期治療は,ペナンブラの有無を迅速に画像診断したうえで,脳血流の超早期回復(血栓の溶解除去),二次的微小循環障害抑制(抗血栓療法),血液脳関門保護および側副血行の促進という血管系に標的を当てた治療と,脳組織細胞傷害の抑制(脳保護療法)の二つの主軸からなる.

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© 2013 日本神経学会
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