2013 年 53 巻 8 号 p. 654-657
症例は45歳女性である.夕食中に左片麻痺を自覚し,救急搬送された.頭部MRIでは拡散強調画像で右前頭葉に淡い高信号域をみとめ,MRAでは右中大脳動脈がM1遠位部で閉塞していた.発症2時間10分でrt-PA静注療法を施行したが,再開通はえられなかった.入院時,発熱と炎症所見は軽微だったが,大動脈弁無冠尖に輝度の高い疣贅をみとめ,血液培養よりCardiobacterium hominisが検出され,感染性心内膜炎と診断した.約半年前の抜歯を契機に菌血症,感染性心内膜炎を発症したと考えた.C.hominisをふくむHACEK群にともなう感染性心内膜炎は,発熱や炎症所見が軽微で診断が困難となるばあいがある.