2013 年 53 巻 9 号 p. 716-720
症例は57歳男性である.精神発達遅滞を有する.1年4ヵ月前より性格変化が出現し,無言・無動症となった.痙攣重積状態となり入院した.脳波でperiodic synchronous dischargeをみとめ,脳MRI拡散強調画像で両前頭葉皮質・視床・右島に高信号域をみとめたため,孤発性Creutzfeldt-Jakob病(CJD)がうたがわれた.しかし,甲状腺自己抗体および抗N末端α-enolase抗体が陽性であり,ステロイドにて臨床症状,脳波・MRI所見の明らかな改善をみとめたため橋本脳症と診断した.CJDをうたがう症例では,橋本脳症も必ず鑑別することが重要と考えられた.