2014 年 54 巻 12 号 p. 1058-1059
多発性硬化症(Multiple Sclerosis; MS)では様々な症状を呈するが,その評価は身体障害が主であることが多い.高次脳機能障害は身体障害に隠れがちであまり臨床的に評価されてこなかったが,患者によっては高次脳機能障害が前面に出るばあいもある.一方で,MSにおける高次脳機能障害では記憶障害や行動異常などがめだつことは少なく,長谷川式簡易知能評価スケールなどのバッテリーでは評価することが難しい.それは,MSでは“注意・集中・情報処理”といった項目が障害されやすいためと考えられる.このような高次脳機能障害のパターンを背景に仕事や日常生活に障害がおよんでいる可能性が考えられ,その評価はMS診療において重要である.