脳脊髄液や脳間質液には,前頭蓋底部の嗅神経に沿って鼻粘膜リンパ管に入り頸部リンパ節にいたる解剖学的吸収路が存在し,脳リンパ排液(brain lymphatic drainage)という概念が成立する.脳灰白質では,脳動脈周囲の血管周囲腔(perivascular space)が機能的にリンパ管に相当し,リンパ流は血流と逆方向に流れていると考えられている.この排液機構は,Aβの蓄積などによる通過障害や動脈硬化による排液駆動力の低下の結果,機能障害を生じ,iNPH,脳小血管病,アルツハイマー病の3疾患の重複病理(comorbidity)を説明しうる機序のひとつであることが推察される.