臨床神経学
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症例報告
脳梁離断症候群を示したインフルエンザワクチン接種後急性散在性脳脊髄炎の1例
荒井 元美高木 大輔長尾 亮介
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2014 年 54 巻 2 号 p. 135-139

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抄録

症例は48歳,右ききの女性である.インフルエンザワクチンを接種した20日後から異常行動,歩行障害などが現れた.頭部MRI検査で脳梁の膝部,体部から膨大部上部にかけての単一病変がみられ,急性散在性脳脊髄炎(acute disseminated encephalomyelitis; ADEM)と診断した.単一物品の使用障害をふくむ観念性失行が左手だけにみられた.また,左手の一側性失書は漢字よりも仮名の障害が高度で,仮名の錯書と順序置換がみられたが仮名1文字の書取は可能であった.左中前頭回後部病変による純粋失書の特徴に類似しており,複数文字列の選択や配列に関する情報が脳梁を介して右半球に伝達される機序が示唆された.脳梁離断症状が前景に立つADEM症例はまれである.

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© 2014 日本神経学会
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